「もう、何を信じたらいいのか分からない」別れた数週間後、郵便局に届いた包みを受け取らなかったワケ
1年つきあった人の話が、最後に全部ずれた
離れた土地に住む人と、1年ほど付き合っていた。会えない時間のほうが長かったから、私はその人が話すことを疑わずに聞いていた。
終わりのきっかけは、別の相手とのやり取りを知ったことだった。別れたいと伝えると、その人の口から、それまで一度も聞いたことのない話が次々と出てきた。
「仕事のことも……本当は、今は働いてない」
「え? 待って。会社の話、ずっとしてたよね」
「あれは……そう思われてただけで」
「そんなの、私に分かるわけないよ」
しばらく黙ったあと、相手はまた口を開いた。
「大学のことも、本当は話してたところと違う」
「……じゃあ、今まで聞いてた話は何だったの?」
返事はなかった。
「もう、何を信じたらいいのか分からない」
そう言うのが精いっぱいだった。どれが本当だったのかを一つずつ確かめる気力は、もう残っていなかった。
別れたあとには、「近くまで来た」という連絡が深夜に2度届いた。
そのうちの一度、窓の下を見ると見覚えのない車が止まっていた。その車が相手と関係していたのかは分からない。それでも怖くなり、私はカーテンを閉め、明かりを消したまま朝まで過ごした。
窓口で送り状を見て、手が止まった
数週間後、郵便受けに不在票が入っていた。荷物が届いているらしい。
心当たりはなかったが、翌日の昼、私は不在票を持って郵便局へ向かった。
番号を呼ばれて窓口へ行くと、係の人が奥から四角い包みを持ってきた。
「こちらのお荷物ですね」
差し出された包みに目を落とした瞬間、私は動けなくなった。
送り状に書かれた差出人の住所に、見覚えがあった。
相手から聞いていた住所だった。
「……すみません」
係の人がこちらを見る。
「これ、受け取りません」
口にすると、自分でも驚くほど声が小さかった。
「受け取りを辞退されるということでよろしいですか?」
「はい。お願いします」
係の人は理由を聞くことなく、手元を確認してうなずいた。
「わかりました。こちらで手続きをしますね」
「ありがとうございます」
結局、中に何が入っていたのかは分からないままだ。
郵便局を出たところで、自分の名前を呼ばれたような気がして振り返った。
けれど、そこにいたのは知らない人ばかりだった。
その後も何年かのあいだ、差出人名の違う郵便物が届くことがあった。住所もその都度違っていた。
同じ人が送っているのか、確かめることはできなかった。ただ、封筒に書かれた文字の癖が似ているように見えるたび、胸の奥がざわついた。
私は自分の名前や連絡先を出している場所を少しずつ見直し、連絡先も変えた。
そして今年、また差出人名の違う郵便物が郵便受けに入っていた。
私は開けなかった。
しばらく封筒を見たあと、これまで届いたものの上に、そっと重ねた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














