「返すのはこの口座に。2か月後までには頼むよ」3万円貸したいとこ。約束を過ぎても返事のないいとこと、正月に再会した
口座番号を書いたメモの行方
祖父の法事で、いとこと久しぶりに会った。
読経が終わってひと息ついたころ、いとこが僕のそばへ来て、小さな声で話しかけてきた。
「なあ、悪いんだけどさ。3万円だけ貸してくれない?」
「え? 急にどうしたんだよ」
「ちょっと足りなくてさ。2か月あれば返せるから」
突然の話だったので、最初は冗談かと思った。
「いやいや、お金の貸し借りはちょっと…」
そう言って一度は流したものの、会食の途中でもう一度頼まれた。
「ほんとに頼む。3万円だけ。ちゃんと返すから」
「さっきも言っただろ」
「分かってるって。でも、頼めるのがお前くらいなんだよ」
何度も同じやり取りを続けるのも面倒になり、2か月で返すという言葉を信じて、僕は3万円を貸すことにした。
ただ、返済の話まで曖昧にしたくはなかった。手帳の紙を一枚破り、自分の口座番号を書いて渡した。
「じゃあ、返すのはこの口座に。2か月後までには頼むよ」
「分かった分かった。助かった、ありがとう」
いとこはメモを受け取ると、財布にしまった。
ところが、2か月が過ぎても入金はなかった。
僕はメールを送った。
「法事のときの3万円、そろそろお願いできる?」
返事はなかった。
一週間ほど待って、もう一度送った。
「すぐに難しいなら、いつごろになりそうかだけでも教えて」
それにも返事はなかった。
さすがに腹は立った。けれど、責めるような長いメールを送るのも違う気がして、それ以上は連絡しなかった。
次に顔を合わせたときには、直接聞こうと思った。
叔母の前で、ようやく返ってきた3万円
その後の正月、祖母の家に親戚が集まった。
こたつには、いとこと叔母が並んで座っていた。僕は二人の向かいに腰を下ろした。
少し迷ったが、このまま何も言わなければ、また先延ばしになる気がした。
「ちょっといい?法事のときの3万円なんだけど」
いとこの顔が一瞬こわばった。
「……ああ」
「2か月って話だったよな。メールも2回送ったけど返事がなかったから、どうなってるのか聞きたくて」
すると、隣にいた叔母が驚いた顔でいとこを見た。
「え?あんた、お金借りてたの?」
いとこは少し黙ったあと、小さく答えた。
「……うん」
「3万円?」
「うん」
叔母は眉を寄せた。
「じゃあ、なんで連絡くらい返さないのよ」
いとこは目を伏せたまま、「ごめん」と短く言った。
しばらくして、尻のポケットから財布を取り出すと、中を確認した。
「……今、返すよ」
そう言って、1万円札を3枚取り出した。
「遅くなって、ごめん」
僕は3万円を受け取った。
「うん。受け取った。ただ、遅れるならひと言くらい連絡してほしかったよ」
「…悪かった」
叔母も申し訳なさそうに僕を見る。
「ごめんね。私、全然知らなくて」
「いや、叔母さんが謝ることじゃないよ」
そう答えると、叔母は小さく息をつき、もう一度いとこのほうを見た。
その場で何もかも元通りになったわけではない。それでも、返してもらえないままになっていた3万円については、ようやく一区切りついた。
親戚同士でも、お金の貸し借りを曖昧にしてはいけない。あの出来事以来、僕は以前よりそう思うようになった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














