「もう走らないって」修学旅行の説明会へ急いだ孫。その夜、私がバスの話をすると顔を赤くした理由
「じいちゃん、どうしよう」駆けこんできた孫
ある日の午後、庭の植木に水をやり終え、居間で休んでいたときのことです。
近所に住む小学6年生の孫が、慌てた様子で駆けこんできました。
その日は授業が早く終わったため、いつものように私の家へ来たのですが、着いてから大事なことを思い出したようです。
「じいちゃん、どうしよう。修学旅行の説明会、今日の午後だった」
「何時からなんだ?」
「もうすぐ。体育館に集まるんだよ」
説明会に出なければ修学旅行に行けなくなるかもしれないと、孫はすっかり焦っていました。
そこまで心配しなくてもいいだろうとは思いましたが、今にも泣きそうな顔です。
私はすぐに車の鍵を持ち、孫を学校まで送ることにしました。
ルームミラーに映った必死の足
学校までは車で5分ほどです。孫を後部座席に乗せて走り出すと、しばらくして後ろから、どたどたと音が聞こえてきました。
何の音だろうとルームミラーを見ると、孫が座ったまま両足を必死に動かしています。
両手で座席をつかみ、真剣な顔で前を見つめていました。
どうやら、少しでも早く学校へ着きたい一心で、車の中でも走っているつもりのようです。
私は吹き出しそうになるのをこらえながら言いました。
「車の中で走っても、早く着かないぞ」
「でも、じっとしてられないんだよ」
「そうか。ベルトだけは外すなよ」
「うん、外さない」
返事をしても、足だけは止まりません。学校の屋根が見えてくると、むしろ動きはさらに速くなりました。
学校に着いても、勢いは止まらなかった
校門の前に着くと、孫は車を降り、そのまま体育館へ向かって全速力で走っていきました。
入口では友だちが手招きをしながら、「早く、早く」と呼んでいます。
車の中で動かしていた足を、そのまま本物の駆け足に変えて走っていく孫の背中を見て、私はとうとう笑ってしまいました。
説明会には何とか間に合ったと、あとで聞きました。
その夜、修学旅行のおこづかいを少しだけはずんで渡すと、孫はうれしそうに封筒を受け取りました。
昼間の姿を思い出し、私は言いました。
「行きのバスでは、足を休めておけよ」
「もう走らないって」
孫は顔を赤くして笑いました。今でもあの日の後部座席を思い出すたび、つい笑ってしまいます。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














