「ちょっと聞きたいだけなの」ホテルのフロントで列を抜かした女性客。だが、スタッフが静かに示した場所とは
チェックインの列で聞こえた大きなため息
友だちと旅行に出かけた日のことです。夕方にホテルへ到着すると、フロントの前にはチェックインを待つ客の列ができていました。私たちも最後尾に並びました。
カウンターでは男性スタッフが一組ずつ丁寧に対応しています。手続きはなかなか進まず、私の後ろから何度も大きなため息が聞こえてきました。
「はあ……いつまでかかるのよ」
振り返ると、キャリーバッグの持ち手を握った女性客が、いら立った様子で列の先を見つめていました。
待ちくたびれる気持ちは分かりますが、みんな同じように並んでいます。私は気にしないようにしていました。
ところが次の瞬間、女性客が突然、列の横へ出たのです。
そのまま前へ進み、途中にいた客の腕を押しのけると、チェックイン中の客の横からカウンターに身を乗り出しました。
「ちょっと聞きたいだけなの。並ぶほどのことじゃないでしょ」
押しのけられた若い男性客は、驚いた顔で女性を見ています。カウンターで手続きをしていた客も、ペンを持ったまま手を止めてしまいました。
あまりに突然のことで、私も思わず友だちと顔を見合わせました。
スタッフが女性客に示した場所
スタッフが女性客に顔を向けると、さっそく不満が飛び出しました。
「この館内図、部屋の場所が分かりにくいのよ」
スタッフが説明しようとすると、女性客はその言葉をさえぎります。
「それに、なんでこんなに待たせるの?こっちはずっと待ってたのよ」
スタッフが話し始めても、女性客は次々と不満を口にします。その間、先ほどまで手続きをしていた客は待たされたままです。
列に並ぶ人たちも困惑した様子でした。私も早くチェックインを済ませたいと思っていましたが、だからといって順番を抜かしていいわけではありません。
女性客の言葉がいったん途切れたところで、スタッフが落ち着いた声で話しました。
「申し訳ございません。皆さまお待ちですので、列の最後尾にお並びいただけますか」
すると女性客は、不満そうに眉を上げました。
「えっ?聞くだけなのよ?」
スタッフは列の後方を手で示し、もう一度、はっきりと伝えました。
「順番にお伺いしております」
女性客は何か言いかけましたが、周囲の客が自分を見ていることに気づいたのか、口を閉じました。
そして、気まずそうに視線を落とすと、キャリーバッグを引きながら列の後ろへ歩いていったのです。
さっきまで追い越していった人たちの前を、今度は逆方向へ戻っていく姿に、私も思わず目を奪われました。
スタッフは先ほどの客に向き直り、丁寧に頭を下げました。
「大変お待たせいたしました」
ようやくチェックインの手続きが再開しました。
隣にいた友だちが私の腕を軽くつつき、小さな声で言いました。
「ちゃんと言ってくれて、よかったね」
私も小さくうなずきました。
旅行の始まりに少し嫌な気持ちになりましたが、誰に対しても同じように丁寧に対応するスタッフの姿を見て、ほっとした出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














