義母「はい、どうぞ」と渡してきた残り物をかき集めた弁当。だが、夫の一言で救われた瞬間
用意してくれた弁当
二人目を妊娠中、上の娘が三歳のときに、念願のマイホームの棟上げを迎えた。
十人ほどの大工さんへの差し入れに、少しいい弁当を選ぼうとしていた私に、義母が申し出てくれた。
「お弁当は私が用意するわ。あなたたちの分も入れておくから」
「私たちはその辺で買うから」
そう言ってもらえて、妊娠中の私は素直に甘えることにした。当日、その言葉が違う意味を持つとは、思ってもいなかった。
現場で義母は、大工さんだけでなくハウスメーカーの担当者にも次々と弁当を配っていく。手元に残った数を見て、私は嫌な予感がした。
大人四人と子ども二人に、弁当はたったの三個しかない。
残された一皿
昼になり、皆で新しい家に戻った。義母は買い物に行く気配もなく、当たり前のように上がり込んでくる。
私がお茶の支度をしていると、義母が取り皿を求めてきた。
「取り皿、ちょうだい」
渡しながら目をやると、三個の弁当はもう取り分けが終わっていた。
夫と娘に一つ、義妹と子に一つ、義父と義母で一つ。残ったのは、容器の底にへばりついたご飯と崩れたおかずだけ。
義母は、その残り物を私の前に置いた。
「はい、どうぞ」
身重の私に、一人前もない残飯を二人分。情けなさで胸が詰まり、私は何も言えなかった。
立場が一変した昼
その光景を、ちょうど部屋に入ってきた夫が見ていた。私の前の皿と、皆の弁当を見比べた夫の表情が、みるみる硬くなる。
「妻にこんな扱いはないよ」
静かだが、はっきりとした声だった。和やかだった食卓が、しんと静まり返る。
「母さん、妊娠中の妻に残り物だけって、どういうつもり?差し入れを用意してくれたのは助かったよ。でも、これはさすがにおかしい」
義母は「もったいないと思っただけよ」と言い返そうとして、言葉に詰まった。
義父も気まずそうに視線をそらす。義妹までが「私の分、お義姉さんにどうぞ」と弁当を押し出してきた。
味方だと思っていた身内に囲まれて、義母は次第に小さくなっていった。やがて、消え入りそうな声でつぶやく。
「……悪かったわね。考えが足りなかった」
私は夫が差し出してくれた弁当を受け取り、ゆっくり頷いた。
「はっきりさせてくれて、よかったです」
あの日を境に、義母は私の前で振る舞い方を改めた。集まりのたび、まず私に席を勧め、料理も一番に取り分けてくれる。残りかすを渡してきたあの昼のことは、今ではもう、誰も口にしない。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














