「普通に歩いてるだけなんですけど」足音への苦情を受け入れない上の階の住人。だが、隣人の女性が伝えた事実
半年間続いた上の階の足音
僕が住むマンションでは、半年ほど前から上の階の足音に悩まされていました。
ほぼ毎朝6時ごろになると、天井からドンドンと音が響いてくるのです。
まだ寝ていたい時間なのに、その音で目が覚めてしまいます。一度起きるとなかなか寝つけず、寝不足のまま朝を迎える日もありました。
最初は生活音だから仕方がないと思っていました。
しかし、毎日のように続くと、さすがに気になってしまいます。
直接注意してトラブルになるのも嫌だったので、僕は手紙を書くことにしました。
朝早くから足音が響いて困っていること、できれば少し気をつけてもらいたいこと。
なるべく丁寧な言葉を選び、自分の部屋番号を添えて、上の階のポストに入れました。
ところが、何日たっても足音は変わりません。それどころか、夜遅くにも響くようになりました。
手紙を読んでもらえたのかも分からず、どうしたものかと悩んでいました。
エレベーターで声をかけられて
そんなある朝のことです。
エレベーターを待っていると、隣の部屋の女性が玄関から出てきました。
ちょうど到着したエレベーターには、上の階の住人が乗っていました。
僕たちが乗り込むと、その住人が僕を見て声をかけてきました。
「あの、下の部屋の方ですよね?」
「はい、そうですけど……」
「この前、手紙を入れましたよね?」
「はい。足音のことで……」
すると住人は、少し不機嫌そうな顔になりました。
「普通に歩いてるだけなんですけど。手紙まで入れられても、正直困るんですよね」
「そうですよね。ただ、朝早くから音が響いて、目が覚めてしまうので……」
「でも、自分の家で歩くなって言われても困りますよ」
僕も歩くなと言いたいわけではありません。ただ、もう少し音を気にしてもらえたらと思っていただけです。
どう説明すれば伝わるのか、言葉に詰まってしまいました。
すると、それまで黙っていた隣の女性が口を開きました。
「あの、すみません。うちにも響いてますよ、朝の6時から」
住人は驚いたように女性を見ました。
「えっ、そちらもですか?」
「はい。私も前から気になっていたんです」
「……そうなんですか」
「普通に生活されているのは分かるんですけど、朝早い時間なので、少し気をつけてもらえると助かります」
住人は少し考えるような表情を浮かべましたが、それ以上は何も言いませんでした。
エレベーターが目的の階に着くと、そのまま黙って降りていきました。
僕は隣の女性に小さく頭を下げました。
「ありがとうございます。僕だけかと思ってました」
「いえいえ。私も気になってたので。少し静かになるといいですね」
まさか隣の部屋にも音が響いていたとは知りませんでした。
その翌週から、朝の足音はずいぶん静かになりました。夜遅くに響くこともなくなり、ようやく目覚まし時計の音で起きられるようになったのです。
隣の女性とは、今でも顔を合わせるたびにあいさつを交わしています。
あのとき女性が声をかけてくれなかったら、僕はうまく説明できないまま終わっていたかもしれません。
一人で悩んでいたことを、ほかの人も同じように感じていた。そのことが分かっただけでも、僕にとっては大きな出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














