「やっちゃったな…修理に出そう」運転中の事故。だが、彼の電話で聞いてしまった事実に背筋が凍った
橋のポールにぶつけた、連休のドライブ
連休のよく晴れた日、私は彼の運転する車で日帰り旅行に出かけていた。
付き合って1年。彼は20歳の大学生で、平日は学校があるからと、いつも会えるのは土日だけ。だから、こうして一日中一緒にいられる旅行が、私はうれしくてたまらなかった。
ブログで知り合ったときから、彼はずっと優しかった。高校1年の私には、年上の彼が見せる落ち着きが、何よりまぶしく映っていた。
自分のことはあまり話さない人で、控えめなんだと思い込んでいた。
事件が起きたのは、帰り道だった。彼がハンドルを切り損ねて、橋のポールに車を擦ってしまったのだ。
幸いけがはなかったが、車体は修理が必要なほどへこんでいた。
「やっちゃったな…修理に出そう」
立ち寄った工場で、整備士が真顔で言った。
「公道での事故なら、警察に届けないと修理は受けられないよ」
電話越しに崩れた、1年分の信頼
彼は少しためらってから、その場で電話をかけた。私はすぐそばで、彼の言葉を何気なく聞いていた。
「事故の届け出をしたいんですが。はい、本人確認ですね」
受話器の向こうから、何かを尋ねられているようだった。彼は小さくうなずいて答える。
「生年月日を伝えます」
続けて読み上げられた数字に、私は思わず彼の横顔を見た。
(え、その年、違う……)
聞いていた年齢と、まるで合わない。私が信じていた「20歳」より、ずっと上の生まれだった。手のひらに、じわりと汗がにじんだ。
電話を切った彼に、私は震える声で尋ねた。
「ねえ、今の生年月日……ほんと?」
「ん?ああ、聞こえてた?……まあ、いろいろあってさ」
彼は気まずそうに笑っただけで、はっきりとは答えなかった。その曖昧さが、何よりも怖かった。
「いろいろって、なに?大学生っていうのも、嘘だったの?」
「そんな大ごとにすることかな。年なんて、ただの数字だろ」
その軽さに、血の気が引いた。悪びれるでも、慌てるでもない。まるで、はぐらかし方まで前から決めていたかのようだった。
「細かいこと気にするなって。お前のことは、ちゃんと好きなんだから」
好き、という言葉が、これほど薄ら寒く聞こえたことはなかった。年齢も、たぶん名前も、職業も。私はこの1年、何ひとつ本当のことを知らないまま、この人のとなりに座っていたのだ。
帰りの車内で、彼はいつも通りに話しかけてきた。私はうなずきながら、その横顔が初めて見る他人のように思えてならなかった。
窓ガラスに映る彼と目が合いそうになって、私はそっと視線を膝に落とした。家までの道のりが、ひどく長く感じられた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














