「長男の俺が決める。お前らは口を出すなよ!」祖母の遺品を独り占めしようとした叔父。解決しても消えなかった涙のワケ
和やかな座敷が一変した瞬間
祖母の七回忌の席で、私はずっと違和感を抑えていた。読経が終わり、親族が座敷でお茶を囲む。久しぶりに顔をそろえた一同で、子どもの頃の思い出話に花が咲く。
そこまでは、穏やかな時間だった。
話題が祖母の遺品整理に移ったとき、叔父が前のめりになった。指輪や掛け軸、簞笥の奥にしまわれていた古い品。どれをどう分けるか、みんなで意見を出し合っていたときだ。
「長男の俺が決める。お前らは口を出すなよ!」
叔父の声が、座敷に響いた。
誰かと相談する気は、最初からないようだった。価値のある物は自分が管理する。叔父はそう繰り返した。
「それは、ちょっと」
母が控えめに口を開いた。祖母の子も孫も大勢いるのだから、みんなで相談して決めたほうがいいと。
ごく当たり前の提案だった。けれど叔父は最後まで聞こうとしなかった。
解決しても消えなかった後味
強い口調にさえぎられ、母は黙り込んだ。
私も、何も言えなかった。祖母の遺影の前で言い争うわけにもいかず、ただ畳の目を数えていた。
叔母たちも気まずそうに目を伏せ、誰も次の言葉を口にできない。
その日は話がまとまらず、重い空気のまま解散した。あれほど和やかだった座敷が、たった数分で別の場所のように変わってしまった。
「お祖母ちゃん、悲しんでるよね」
帰り道、母がぽつりとこぼした。私はうなずくことしかできなかった。
後日、親族全員で席を設け直し、遺品は公平に分けることになった。叔父の言い分が通ることはなかった。話の筋としては、きちんと収まったはずだった。
それなのに、心はちっとも晴れなかった。
形のうえで公平に分けられても、あの法事の場が壊れた事実は元に戻らない。あのときの母の沈んだ泣き顔が、頭から離れなかった。
祖母を静かに偲ぶための一日が、誰かの欲で台無しになった。手元の遺品を見るたびに、あの座敷の凍った空気がよみがえる。
あの場でもっと何か言えていたら、と思うこともある。けれど、今さら巻き戻せるわけでもない。
遺品そのものより、壊れてしまった法事の記憶のほうが、ずっと重く残っている。
今も、すっきりしないままだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














