「もう歩けん」「ここどこや」と結婚式前夜に泥酔して消えた叔父たち。探した私たちに待っていたのは
真夜中に鳴った電話
私の結婚式は、十年前に都内で挙げた。
地方から父の兄と弟、伯父と叔父が前泊で駆けつけてくれた。
家が狭いので二人には近所のビジネスホテルに泊まってもらい、前夜は我が家で兄弟水入らずの宴会をした。
父も私も早めに寝たのだが、叔父たちはホテルに戻らず駅前へ飲みに行ってしまった。
日付が変わった頃、枕元の携帯が震えた。出ると、ろれつの怪しい叔父の声がした。
「もう歩けん」
道端でへたり込んで動けないという。代わってもらった伯父も、まるで状況が分かっていなかった。
「ここどこや」
自分たちが繁華街のどのあたりにいるのか、ホテルの名前すら覚えていないらしい。
明け方まで続いた捜索
手がかりは「焼き鳥屋の前」という一言だけ。私と父は顔を見合わせ、ため息をついて街へ出た。
「とにかく、赤提灯を片っ端から見ていくしかないな」
父の声には、もう怒る気力すら残っていなかった。
深夜の繁華街に焼き鳥屋は数えきれないほどあり、一軒ごとにのぞいては首を振る、その繰り返しだった。
赤提灯を見つけるたびに小走りで近づき、煙の立ちこめる店先をのぞき込む。
けれど、いるのは見知らぬ客ばかりだった。似たような店構えが延々と続き、どれだけ歩いても二人の姿はない。父と私は無言で、ただひたすら路地を曲がり続けた。
足が棒になった頃、ようやく路地の隅で壁にもたれた叔父と、その横で立ち尽くす伯父を見つけた。
二人とも、こちらに迷惑をかけている自覚がまるでない様子で、のんきに笑っている。
「おう、迎えに来てくれたんか。悪いなあ」
その言葉に、父はまた何か言いかけて、口を閉じた。怒鳴ったところで体力の無駄だと悟ったのだろう。私たちは二人を両側から支え、ふらつく足取りをなだめながら、ようやくホテルまで連れ戻した。
ホテルに送り届けると、これまたお約束のカードキー紛失。
フロントで頭を下げて再発行の手続きをし、二人を部屋へ放り込んだ頃には、外がすっかり明るくなっていた。
「式、何時からだっけな」
父の独り言に、私はもう笑うしかなかった。結局、新郎の私は一睡もできないまま本番に臨んだ。
後日談として、叔父は帰りの新幹線のチケットまで失くし、父が黙って立て替えたと聞いた。お酒好きの私でも、晴れの舞台の前夜にこれは勘弁してほしかった。やれやれと肩をすくめるしかない、忘れられない一夜である。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














