「あなたはもっと食べなさい」同じ孫なのに、祖母が私にだけ何度も料理を勧めていた理由
孫が集まる日の食卓
祖父の法事の日、祖母は朝から台所に立っていました。
煮しめやいなり寿司、唐揚げなど、親戚が集まる日の定番料理が座敷の卓いっぱいに並んでいました。
祖母にとって孫は3人。長男である父の娘の私と、父の妹の娘である従姉が2人です。従姉たちは私より年上で、小さいころからよく遊んでもらっていました。
読経が終わり、親戚みんなで食事を始めると、祖母は大皿を持って私たちのところへやってきました。
「ほら、あなたはもっと食べなさい」
そう言って、祖母は私の取り皿に唐揚げを一つ追加しました。
私は「ありがとう」と答えましたが、そのすぐ隣では従姉も同じように食事をしていました。
少しずつ気づいた扱いの違い
しばらくすると、一番上の従姉が唐揚げに箸を伸ばしました。
すると祖母が、何気ない調子で言いました。
「あなたたちはもう大きいんだから、ほかの人の分も残しておいてね」
従姉は「うん、分かった」と笑って箸を引きました。
ところが、その直後には祖母がまた私に向かって言ったのです。
「あなたは遠慮しなくていいのよ。もう一つ食べなさい」
そのとき初めて、私は少し居心地の悪さを覚えました。
従姉が何か悪いことをしたわけではありません。
私だけが年下だからなのかと思いましたが、食事だけではありませんでした。
お菓子を出すときも、祖母は私に「好きなのを先に取りなさい」と言い、帰りに持たせるものも、まず私の袋を用意していました。
あるとき従姉が冗談っぽく、「やっぱり長男のところの孫は違うね」と笑ったことがあります。
祖母は否定するでもなく、「だってこの子はうちの孫だもの」と答えました。
私にはその意味がよく分かりませんでしたが、従姉が一瞬だけ黙った表情は、今でも覚えています。
大人になって分かったこと
大人になってから、父方の親戚と昔の話をしていたとき、祖母には長男の家を特別に考えるところがあったと知りました。
だからといって、従姉たちを嫌っていたわけではありません。誕生日には贈り物をしていましたし、会えば嬉しそうに話していました。
ただ、祖母自身も意識しないまま、私を少しだけ優先していたのだと思います。
数年前、親戚の集まりで従姉たちと食事をしたとき、大皿の料理が私の前に置かれました。
私は何となく皿を隣へ回して、「先に取って」と言いました。
従姉は少し驚いたあと、「じゃあ遠慮なく」と笑って料理を取りました。
昔のことを口にする人はいませんでした。
でも私は、子どものころ自分だけが何度も「遠慮しなくていい」と言われていた食卓を、ふと思い出していました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














