親族「あなたどちら様でしたっけ」40人の大所帯に嫁いで給仕係扱い→義妹の夫の一言で座敷が静まり返った通夜
四十人の大所帯
結婚するとき、夫の家の大きさに驚かされた。いとこだけで約四十人。
挨拶に伺える親族を絞らないと、収拾がつかないほどだった。
その義父が亡くなり、通夜には数えきれないほどの親族が集まった。
私にとっても、義妹の夫にとっても、半分以上が初対面だ。
「ごめんなさい、あなたどちら様でしたっけ」
廊下ですれ違った年配の親族に、そう尋ねられた。
名乗っても、ああそう、と興味なさそうに座敷へ戻っていく。
給仕係の私
座敷では、親族たちが思い思いに話し込んでいた。けれど、その輪に私の入る隙間はどこにもない。
「お茶のおかわり、お持ちしますね」
私にできることといえば、湯呑みを満たして回ることくらいだった。
お盆を抱えて台所と座敷を何往復もするうちに、誰の顔も覚えられないまま夜が更けていく。
視線を上げると、義妹の夫も壁際に立ち尽くしている。気まずそうに、手持ち無沙汰に。彼も時折、出された座布団に浅く腰かけては、すぐにまた立ち上がっていた。
座っていても、声をかけてくれる人がいないからだ。
「お子さんは何年生?」
そんな一言すら、誰からも飛んでこない。自分の親族の席なら、連れ合いにも必ず声をかける。
誰かに紹介し、輪に入れてやる。それが普通だと、私は信じていた。
(この人たちには、私たちが見えていないみたい)
冷たいのか、無関心なのか。どちらにせよ、居場所はなかった。私はまた、空になった急須を持って立ち上がった。
救われた一言
通夜の喧騒がようやく落ち着いた頃、義妹の夫が座敷の中央に立った。彼は親族たちを見渡し、はっきりとした声で言った。
「皆さん自分の話だけで会話が成立、凄いですね」
潮が引くように、座敷の話し声が消えた。最初に笑っていた年配の男が真顔になり、次に隣の女性が気まずそうに目を伏せる。
最後には誰もが、決まり悪そうに黙り込んでいた。
「この人なんて、誰にも名前を聞かれないまま、ずっとお茶を運んでいたんですよ」
すると奥のほうから、「……ほんとね、私たちったら身内だけで」という声がした。
ばつが悪そうにうなずく人が、ぽつぽつと増えていく。さっきまで私の存在に気づきもしなかった人たちが、急に居住まいを正していた。
「いえ、どうかお気になさらず」
私は空の急須を抱えたまま、背筋を伸ばして言った。もう曖昧に笑ってやり過ごす気はなかった。
言うべきことを誰かが言ってくれた。それで十分だった。
あの日を境に、法事で顔を合わせると、親族たちのほうから先に頭を下げてくるようになった。
気まずそうに目を泳がせる彼らを見るたび、私と義妹の夫は、そっと目配せを交わして口元をゆるめた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














