「10時に伺います」取り置き済みでも予約を欠かさない常連客。学生時代の私が教えられたこと
毎週水曜に来る、いつものお客さん
学生時代にアルバイトをしていたパン屋には、今でも印象に残っているお客さんがいます。毎週水曜日の10時ごろ、決まって同じ食パンを買いに来る年配の女性でした。
選ぶのはいつも、朝いちばんに焼き上がる山型食パンを一斤。曜日も時間もほとんど変わらないため、店長も私たち店員もすっかり覚えていました。
水曜日の朝になると、焼き上がった食パンの中から一斤を取り分け、名前を書いた取り置きの札を添えておきます。
「あの方の分、今日も忘れないでね」
店長に言われるまでもなく、それはいつの間にか水曜朝の習慣になっていました。
ところが、その女性にはもうひとつ、毎週欠かさないことがありました。
取り置きすると知っていても、必ず電話をくれた
毎週火曜日になると、店に一本の電話がかかってきます。受話器の向こうから聞こえるのは、いつもの落ち着いた声でした。
「毎週水曜、10時に伺います。明日も一斤お願いします」
店では、電話がなくても翌朝には一斤を取り置くつもりでいました。
そのことは女性も知っています。
あるとき私が、「いつもの分はご用意しますので、お電話がなくても大丈夫ですよ」と伝えたことがありました。
すると女性は、「ありがとうございます。でも、行くと決めているなら、一応お伝えしておきたくて」と穏やかに答えました。
電話を切ったあと、私は先輩の店員に「毎週、本当に律儀ですよね」と話しました。
先輩も笑いながら、「こういうお客さんがいると、こっちも安心して準備できるよね」と言いました。
確かに、毎週来ると分かっているお客さんでも、急な予定で来られなくなることはあります。前日にひと言連絡をもらえるだけで、こちらも迷わず商品を確保しておけます。
当たり前のように続ける姿が印象に残った
そして水曜の10時ごろになると、女性はほぼ時間どおりに店へやって来ました。
私が取り置いていた食パンを渡すと、いつも「ありがとうございます」と丁寧に頭を下げます。
大げさなことをするわけではありません。電話一本を入れ、約束した時間に来て、受け取ったらお礼を言う。ただそれを毎週変わらず続けているだけです。
けれど学生だった私には、その姿が妙に新鮮でした。
相手が分かっているだろうからと省かず、自分からきちんと伝える。その小さな心遣いのおかげで、店側も安心して準備ができていました。
今でも水曜日になると、ときどきあの女性を思い出します。丁寧さとは特別なことではなく、こうした小さな行動を続けることなのかもしれないと、当時の私は教えてもらった気がしました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














