「お弁当食べますね」美容室で食事を始めた客。だが、店長が正論をぶつけた結果
鏡の前に広げられたお弁当
美容師をしていた頃、今でもよく覚えているお客様がいます。
お子さんを二人連れて、カットにいらしたお母さんでした。
予約時間ちょうどに来店され、私はお母さんを鏡の前の席へご案内しました。
お子さんたちは、すぐ近くの待合スペースで座って待っています。
カットを始めてしばらくしたころ、お母さんが足元に置いていたバッグへ手を伸ばしました。
取り出したのは、風呂敷に包まれた大きなお弁当箱です。
私はてっきり、あとで食べるものを確認しているだけだと思っていました。ところが、お母さんは鏡の前の台に弁当箱を置き、そのままふたを開けたのです。
「お弁当食べますね」
そう言うと、お子さんたちを手招きしました。二人もすぐにソファからやってきます。
「はい、順番にね」
最初は、お子さんに少し食べさせるだけなのかと思いました。しかし、おかずを取り分けたあと、お母さん自身も箸を手にして食べ始めたのです。
施術中のお客様が箸を持ったままでは、こちらも安全にカットを続けられません。私はいったんハサミを止めました。
ただ、お子さんたちもすでに食べ始めていて、どう声をかければ角が立たないか迷ってしまいました。
店長が静かに伝えたこと
すると、少し離れた場所から様子を見ていた店長が、私たちのところへ来ました。
店長はお母さんのそばで腰をかがめ、穏やかな声で話しかけます。
「申し訳ありません。施術スペースでのお食事はお控えいただいているんです。いったんお弁当をしまっていただけますか」
責めるような言い方ではありませんでしたが、店としてお願いしたいことははっきり伝わる言葉でした。
お母さんは少し驚いた顔をしたあと、箸を置きました。
「あ、ごめんなさい。ここで食べちゃだめだったのね」
そう言って、お子さんたちにも声をかけ、広げていたお弁当を片づけ始めました。
店長は「ありがとうございます」とだけ返し、お子さんたちを再び待合スペースへ案内しました。
私はようやくカットを再開することができました。
お客様に注意するのは、内容が正しくても言い方に迷うものです。あのとき店長が相手を責めず、それでも必要なことをきちんと伝えてくれた姿を見て、接客では伝え方も大切なのだと実感しました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














