「もう二度と話したくありません」返金を求めて一時間話していた相手が、最後に残した一言
三回、言い方を変えてお伝えした午後
電話の窓口で、お客さまからのお申し出をうかがう仕事をしていたころのことです。
その日の午後にかかってきたのは、返金と解約についてのお電話でした。
「返金と解約をお願いします」
記録を確認すると、これまでの手続きに少し行き違いはあったものの、返金の条件にはあてはまらないケースでした。
私はできるだけ分かりやすく説明しました。
「確認しましたが、今回については返金の対象にはならないんです」
しかし、最後まで説明する前に言葉を重ねられてしまいます。
そこで表現を変えながら、同じ内容を三回お伝えしました。それでも、話は少しずつ別の方向へ広がっていきました。
「前に問い合わせたときも、説明が分かりにくかったんです」
そこから以前の電話対応の話になり、さらに案内の仕方や手続きへの不満へと続いていきます。
私は途中で何度か返金の話へ戻そうとしましたが、そのたびに新しい話が始まりました。
気づけば、一時間近く受話器を持ったままでした。
最後に、その方から出た一言
しばらくして、相手の声が少し落ち着きました。
そして、それまでとは違う静かな調子で言いました。
「返金の件はもういいです。そちらとは二度と話したくありません」
あれほど返金を求めていたので、一瞬、返事に迷いました。
「かしこまりました」
そう答えると、その方は短く何かを言って電話を切りました。
受話器を戻した瞬間、それまで気にならなかった周囲の音が急に耳に入ってきました。隣の席の話し声や、少し離れたところにあるコピー機の音まで、妙にはっきり聞こえました。
隣にいた先輩が、こちらを見ました。
「終わった?」
私は小さくうなずきました。
「最後に、もう二度と話したくないと言われました」
先輩は少し間を置いてから、苦笑しました。
「一時間話したあとに、それを言われたのね」
私もつられて少し笑ってしまいました。
そのあと、対応記録には返金対象外であることをご案内したことと、お客さま自身が電話を終えられたことだけを残しました。
あれほど返金を求めて始まった電話だったのに、最後はその話を自分から終わらせてしまったことが、今でも妙に記憶に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














