「休み時間が削られるんだよ」毎月ぼやく夫。だが、助手席の下で見つけた空の袋に笑った理由
助手席の足元から出てきた、空の袋
夫の車で出かけた日のことです。助手席に座って足を動かしたとき、靴の先に何かが当たりました。
拾い上げてみると、シートの下から出てきたのは紙の袋でした。
中にはお菓子が入っていたらしく、残っているのは小さな包み紙だけ。それもきれいにたたまれていました。
見覚えのない袋でしたが、すぐに思い当たることがありました。
夫の職場には、月に何度か保険の担当者が来るそうです。
夫はその話を家でするたび、少し面倒そうにしていました。
「保険の人が来ると休み時間が削られるんだよ。お菓子とかもくれるけど、別にいらないし」
私はそのたびに、「そんなに嫌なら断ればいいのに」と返していました。
けれど夫は、「職場に来るから、なかなか断りにくいんだよ」と言います。
夫は昼休みになると、一人で車に戻って少し横になるのが習慣です。その時間を使われるのが嫌なのだろうと、私はずっと思っていました。
信号で車が止まったとき、私は拾った袋を夫に見せました。
責めるつもりはありません。ただ、空っぽになった袋を見ていたら、つい笑ってしまいました。
「お菓子はおいしかった?次は私の分ももらってきて」
夫は一瞬こちらを見て、少し気まずそうに笑いました。
「見つかったか」
嫌なのは、お菓子ではなかった
夫は少し間を置いてから言いました。
「あれ、けっこううまいんだよ」
私は思わず笑いました。あれだけ「いらない」と言っていたのに、包み紙まできれいにたたんで持ち帰っていたからです。
すると夫は、言い訳するように続けました。
「休み時間が短くなるのは嫌なんだよ。でも、話してみたら別に嫌な人でもないし」
そこでようやく分かりました。
夫が嫌がっていたのは、保険の担当者そのものでも、お菓子でもありません。昼休みにゆっくりできなくなることが、一番嫌だったようです。
家では文句の部分ばかり聞いていたので、私は全部が嫌なのだと思い込んでいました。
次の月、私の分も増えていた
それからしばらくして、夫が仕事から帰ると、玄関で紙の袋を差し出してきました。
前に車で見つけたものと同じ袋です。
「これ、君の分」
中には、まだ手をつけていないお菓子が入っていました。
「本当にもらってきたの?」
私が笑うと、夫も少し照れたように笑いました。
その後も夫は、保険の担当者が来た日は「今日も昼休みが短くなった」とこぼします。けれど、ときどきお菓子も持って帰ってくるようになりました。
嫌だと言っていることが、何もかも嫌なわけではない。
夫の愚痴を聞くたび、私はあの空っぽの袋を思い出します。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














