「実は、もう載せちゃったんだよね」授業参観の写真を公開していた保護者。だが、私が伝えた本音
窓側の列から、教室ぜんぶが入っていた
上の子が1年生になった年の、秋の参観だった。
私は窓側のいちばん後ろに立ち、授業を見ていた。廊下側の壁ぎわにも保護者が並び、担任の先生が机のあいだを歩いている。
教室に入る前には、ほかのお子さんが大きく写り込む撮り方は控えること、撮った写真を外部に公開しないことについて説明があった。
授業が終わりかけたころ、同じクラスの保護者が私の腕を軽く引いた。
「ねえ、見て。けっこうきれいに撮れたと思わない?」
差し出された画面を見て、私は返事に迷った。
手を挙げている子も、うつむいている子も、先生の横顔も、教室の後ろに立つ保護者まで写っていた。
「ほんとだ。思ったより、みんな入ってるね」
「そうなの。あとで見て私もびっくりした」
彼女は悪びれた様子もなく笑っていた。そこで私は、気になったことだけ伝えた。
「これ、外には載せないほうがいいかも。さっき先生も言ってたし」
すると彼女は「あー……」と少し声を落とした。
「実は、もう載せちゃったんだよね」
「そうなんだ」
「知り合いしか見ないところなんだけど。かわいいって言ってもらえて、つい」
楽しそうに話す顔を見ていると、それ以上強くは言えなかった。
気になったまま、何も言えなかった
翌週、学校の廊下で顔を合わせたとき、私は思い切って聞いてみた。
「この前の写真って、まだ載せてる?」
彼女は一瞬だけ目をそらした。
「うん、まだそのまま。……やっぱり気になる?」
「ちょっとだけね」
「そっか。でも、そんなにたくさんの人が見るものじゃないから」
そう言われると、また言葉が止まった。注意したいわけでも、彼女を責めたいわけでもない。ただ、自分の子どもまで写った写真が外に出ていることが、どうしても引っかかっていた。
雨の朝、やっと自分の言葉で伝えた
それから少したった雨の朝、昇降口でまた彼女と顔を合わせた。
少し世間話をしたあと、彼女のほうから言った。
「そういえば、この前の写真、まだそのままなんだよね」
私は少し迷ってから口を開いた。
「ねえ、嫌な言い方に聞こえたらごめん。でも、載せたものは消してもらえたら安心する」
彼女はすぐには答えなかった。
「……やっぱり嫌だった?」
「嫌っていうより、うちの子だけじゃなくて、ほかの子もたくさん写ってたから」
彼女は少し黙り、それから小さくうなずいた。
「そっか。そうだよね。私、かわいく撮れたことばっかり考えてた」
「責めたいわけじゃないよ」
「うん、分かってる。ごめんね。消しておくね」
「ありがとう」
それ以降、その写真について話すことはなくなった。学校で顔を合わせれば、今までと同じように挨拶もする。
あのとき黙ったままでも、その場はやり過ごせたと思う。それでも、相手を責める言葉ではなく、自分が気になっていることとして伝えたことで、その後も気まずくならずに済んだのだと思っている。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














