tend Editorial Team

2026.09.13(Sun)

「実は、もう載せちゃったんだよね」授業参観の写真を公開していた保護者。だが、私が伝えた本音

「実は、もう載せちゃったんだよね」授業参観の写真を公開していた保護者。だが、私が伝えた本音

窓側の列から、教室ぜんぶが入っていた

上の子が1年生になった年の、秋の参観だった。

私は窓側のいちばん後ろに立ち、授業を見ていた。廊下側の壁ぎわにも保護者が並び、担任の先生が机のあいだを歩いている。

教室に入る前には、ほかのお子さんが大きく写り込む撮り方は控えること、撮った写真を外部に公開しないことについて説明があった。

授業が終わりかけたころ、同じクラスの保護者が私の腕を軽く引いた。

「ねえ、見て。けっこうきれいに撮れたと思わない?」

差し出された画面を見て、私は返事に迷った。

手を挙げている子も、うつむいている子も、先生の横顔も、教室の後ろに立つ保護者まで写っていた。

「ほんとだ。思ったより、みんな入ってるね」

「そうなの。あとで見て私もびっくりした」

彼女は悪びれた様子もなく笑っていた。そこで私は、気になったことだけ伝えた。

「これ、外には載せないほうがいいかも。さっき先生も言ってたし」

すると彼女は「あー……」と少し声を落とした。

「実は、もう載せちゃったんだよね」

「そうなんだ」

「知り合いしか見ないところなんだけど。かわいいって言ってもらえて、つい」

楽しそうに話す顔を見ていると、それ以上強くは言えなかった。

気になったまま、何も言えなかった

翌週、学校の廊下で顔を合わせたとき、私は思い切って聞いてみた。

「この前の写真って、まだ載せてる?」

彼女は一瞬だけ目をそらした。

「うん、まだそのまま。……やっぱり気になる?」

「ちょっとだけね」

「そっか。でも、そんなにたくさんの人が見るものじゃないから」

そう言われると、また言葉が止まった。注意したいわけでも、彼女を責めたいわけでもない。ただ、自分の子どもまで写った写真が外に出ていることが、どうしても引っかかっていた。

雨の朝、やっと自分の言葉で伝えた

それから少したった雨の朝、昇降口でまた彼女と顔を合わせた。

少し世間話をしたあと、彼女のほうから言った。

「そういえば、この前の写真、まだそのままなんだよね」

私は少し迷ってから口を開いた。

「ねえ、嫌な言い方に聞こえたらごめん。でも、載せたものは消してもらえたら安心する」

彼女はすぐには答えなかった。

「……やっぱり嫌だった?」

「嫌っていうより、うちの子だけじゃなくて、ほかの子もたくさん写ってたから」

彼女は少し黙り、それから小さくうなずいた。

「そっか。そうだよね。私、かわいく撮れたことばっかり考えてた」

「責めたいわけじゃないよ」

「うん、分かってる。ごめんね。消しておくね」

「ありがとう」

それ以降、その写真について話すことはなくなった。学校で顔を合わせれば、今までと同じように挨拶もする。

あのとき黙ったままでも、その場はやり過ごせたと思う。それでも、相手を責める言葉ではなく、自分が気になっていることとして伝えたことで、その後も気まずくならずに済んだのだと思っている。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.11.03(Tue)

「お母さんもそばにいたのにね」公園の砂場で聞こえた母親たちの陰口。だが、何も言い返せなかった私を救った一言
tend Editorial Team

NEW 2026.11.03(Tue)

「勝手に悪者にするな!」と騒音の苦情の席に怒鳴り込んだ隣人。私が静かにスマホを出すと、住民の前で頭を下げた
tend Editorial Team

NEW 2026.11.03(Tue)

「家では普通に解けるのに」授業参観中、娘に答えを教えた母親。しかし、黒板に書かれた正解を見て黙り込んだ理由
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.07.31(Fri)

「向かいの壁にだけ、当てなきゃいい」寝室を打つボールの音。だが、こちらも注意書きを貼った日から態度が一変
tend Editorial Team

2025.09.12(Fri)

スマイリーキクチ、Xで広陵問題めぐるSNS晒し行為に警鐘「加害者を被害者にしてはいけない」
tend Editorial Team

2026.08.07(Fri)

「玄関から外に出られないんです」誤って置き配でドアをふさいだ荷物。電話対応した私が感じた本音
tend Editorial Team