「また何か捨てたの?」公園でごみを捨てたと誤解された私。だが、ベンチに座っていた人が救ってくれた瞬間
虫を逃がしていただけなのに、「拾って」と言われた
近所の公園を歩いていると、たまに通路のすぐそばに虫がいることがある。
人に踏まれそうな場所にいるときだけ、私はそっと拾って、植え込みの奥へ逃がすようにしていた。
春先のある日も、通路の端に小さな虫を見つけた。
指先に乗せ、すぐそばの植え込みへ移したところで、うしろから声をかけられた。
「ちょっと。今、そこに何か捨てたでしょう」
振り返ると、近所でよく見かける年配の女性が立っていた。ときどき公園のごみを拾っている人だった。
「え?違います。虫がいたので、こっちへ逃がしただけです」
そう説明したが、女性は植え込みを見ながら首を振った。
「でも、今何か入れたじゃない。ちゃんと拾って」
「本当にごみじゃないんです。通路に虫がいたので…」
「そういうの、あとで誰かが片づけることになるのよ」
どうやら、私が小さなごみを植え込みへ投げ入れたように見えたらしい。
もう虫は植え込みの中へ入っていて、見せることもできなかった。
「…分かりました」
それ以上言っても伝わらない気がして、私はその場を離れた。
悪いことをしたわけではないのに、なんとなく後味の悪さだけが残った。
数か月後、同じ人にまた呼び止められた
夏の終わり、同じ公園を歩いていると、今度はベンチの近くに虫がいた。
そのままでは誰かに踏まれそうだったので、拾って植え込みの奥へ移した。
立ち上がったところで、またうしろから声がした。
「あら。また何か捨てたの?」
春に声をかけてきた女性だった。
また同じことになるのかと思い、私は少し身構えた。
「違います。今も虫を逃がしただけです」
「でも、そこに何か入れたでしょう?」
そのとき、すぐ近くのベンチに座っていた人が口を開いた。
「あの、今のは虫でしたよ」
女性が振り返った。
「虫?」
「はい。そこにいた虫を拾って、植え込みの中へ移してました。私、ちょうど見てたので」
責めるような言い方ではなく、ただ見たままを説明してくれた。
女性は少し黙ってから、私のほうを見た。
「そうだったの。私には、何か捨ててるように見えたから」
「そう見えたのかもしれません。でも、ごみを捨てていたわけじゃないんです」
今度は私も、そこだけはきちんと伝えた。
女性は「分かったわ」と小さく答えると、それ以上何も言わずに歩いていった。
私はベンチの人に頭を下げた。
「ありがとうございます。前にも同じ人に注意されたことがあって」
「そうだったんですね。今日はたまたま見えていたので」
それだけのやり取りだった。
けれど、自分ではうまく説明できなかったことを、たまたま見ていた人がそのまま伝えてくれただけで、ずっと残っていた引っかかりが少し軽くなった。
それ以来、あの女性から同じことで注意されることはない。
今でも公園を歩いていて、踏まれそうな場所に虫がいれば、私はそっと植え込みの奥へ逃がしている。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














