tend Editorial Team

2026.09.12(Sat)

「子どもはまだなの?」正月の集まりで何度も聞いてくる親戚。だが、夫が庇ってくれた結果

「子どもはまだなの?」正月の集まりで何度も聞いてくる親戚。だが、夫が庇ってくれた結果

その話はやめましょう、と2度だけ言われた

結婚して初めての正月に、夫の実家へ行った。畳の間に長机を二つ並べ、朝から親戚が集まってくる。私は名前を覚えきれないまま、湯呑みを配って回っていた。

座布団の数を確かめると、親戚は10人だった。

上座には義母の姉がいて、その正面に私が座ることになった。重箱が開き、しばらくは天気と道の混み具合の話が続いた。

話が私のほうへ向いたのは、雑煮の椀が下げられたころだった。

「あなたたち、まだ子どもはできないの」

「はは、まだですね」

笑ってかわしたつもりだった。けれど同じ質問はそのあとも来て、数えると3度になった。

合間には、若いうちがいいよ、早く孫を見せてあげないとね、という言葉が挟まる。

誰も止めなかった。皆、箸を動かしながら聞いている。悪気はないのだと思う。

ただ、その場で私が返せる言葉は、どこにも見当たらなかった。

畳に置いた手が汗ばんできたころ、隣の夫が箸を置いた。

「うちのことは、うちで決めます」

それだけだった。責める調子はなく、言い直しもしなかった。

座敷の空気が変わるまでに誰かが置いた、短い一声

座敷から音が消えた。義母の姉は何か言いかけて、湯呑みを持ち上げたまま止まった。

誰も助け舟を出さない時間が、十秒ほど続いたと思う。

その沈黙を割ったのは、下座にいた親戚の一人だった。

「その話はやめましょう」

強い声ではなかった。皿を回しながらの、世間話と同じ調子だった。

「そうよね。その話はやめましょう」

「せっかくのお正月だもの、その話はやめましょう」

「…はいはい。分かりましたよ」

義母の姉が笑って手を振り、みかんの箱をこちらへ押した。

それで場が戻った。誰かがテレビの音量を上げ、駅伝の中継が映る。順位を読み上げる声が重なり、私の前の皿にみかんが二つ置かれた。

台所で洗い物をしていると、さっきの親戚が布巾を持って入ってきた。

「あれね、うちの席では毎年出るのよ。誰かが止めればいいだけ」

「助かりました」

「ご主人が先に言ったからよ。私はあとから乗っただけ」

翌年の正月も、同じ座敷に10人が集まった。重箱が回り、駅伝が流れ、みかんの皮が皿にたまっていく。あの質問は、それきり一度も出ていない。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.11.03(Tue)

「予約サイトの写真とイメージが違う」旅館の部屋に不満を訴えた客。スタッフが予約画面を見せると、突然黙り込んだ理由
tend Editorial Team

NEW 2026.11.03(Tue)

「今月も有給?何しに行くの?」と休みの理由を毎回問いただすお局。私が行き先を答えると、お局の顔が引きつった
tend Editorial Team

NEW 2026.11.03(Tue)

「倒すのはこっちの勝手だろ」新幹線で後ろの客に言い放った男性。しかし、前の客が座席を倒すと態度が一変
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.04.17(Fri)

竹内涼真主演ミュージカル『奇跡を呼ぶ男』が当日の体調不良により、開演3時間前に公演中止を発表→「判断が遅いのでは?」「中...
tend Editorial Team

2026.05.11(Mon)

「まだ早いんじゃないかしら」顔合わせの席で繰り返し結婚を反対した相手の母→そわそわする彼に見切りをつけた30代
tend Editorial Team

2026.06.19(Fri)

猪狩ともか「私はもう赤い羽根に募金をしません」と赤い羽根共同募金の着服疑惑に苦言
tend Editorial Team