「じゃあ誰が責任取るんだよ」気泡だらけの保護フィルムを持ち込んだ客。何度説明しても止まらない要求とは
土曜の夕方に、声だけが高くなった
数年前に働いていた店で、私は会計を担当していた。
土曜の夕方、画面用の保護フィルムを買った男性が店を出ていった。
ところが少しして、その男性が戻ってきた。私はまだ次のお客様の会計をしている途中だった。
男性は開封済みの袋とスマホをレジ台に置いた。
中のフィルムには、端から中央にかけて気泡が残っていた。
「これ、さっきここで買ったやつなんだけど。貼ったらこんなになっちゃってさ。新しいのに交換してもらえる?」
私は会計を終えてから、男性に向き直った。
「こちら、ご自身で貼られたものでしょうか?」
「そうだけど。見れば分かるでしょ、失敗してるじゃん」
「そうでしたか。申し訳ありません。商品自体に不具合がある場合は確認できるんですが、貼り付けたあとの状態ですと交換はできないんです」
男性は納得できない様子で、フィルムを指で示した。
「でも、これじゃ使えないでしょ。ここで買ったんだから何とかしてよ」
「お気持ちは分かるんですが、当店では貼り付け作業も行っていないので、貼ったあとの仕上がりについては保証できないんです」
男性の眉間にしわが寄った。
「じゃあ、失敗したら全部こっちの責任ってこと?」
「申し訳ありません。フィルムそのものに傷があったり、最初から不具合があったりした場合は別なんですが、今回は貼り付け後なので……」
「いや、だからさ。今日だけ交換してくれればいいじゃん」
私はもう一度、できるだけ声を落として伝えた。
「すみません。貼ったあとのものは交換できない決まりなんです」
これで三度目だった。
「そんなの納得できないよ。責任者呼んで」
男性の後ろには、いつの間にか5人ほどの列ができていた。待っている人たちは何も言わず、手元の商品やかごに視線を落としている。
店長が来ても、答えは変わらなかった
責任者を呼んでほしいと言われたため、私は店長を呼んだ。
店長がレジまで来ると、男性はすぐにフィルムを差し出した。
「これ、ここで買ったんですよ。貼ったら気泡だらけになって。交換してって言ってるんですけど」
店長はフィルムを確認してから、静かに尋ねた。
「こちらは、お客様ご自身で貼られたものですか?」
「そうですよ。でも、ここで買ったものなんだから、交換くらいしてくれてもいいでしょ」
「そうでしたか。申し訳ありません。商品自体の不具合でしたら確認できますが、貼り付け後の状態を理由とした交換はお受けしていないんです」
男性は少し声を強めた。
「だから、今日だけでいいって言ってるんだよ」
「すみません。今日だけ、という形でもお受けできないんです」
男性はしばらく黙っていた。
それからフィルムを見て、店長を見て、最後に後ろを振り返った。そこには5人ほどのお客様が静かに順番を待っていた。
「……本当にダメなの?」
「はい。申し訳ありません」
少し間があった。
男性は小さく息を吐くと、フィルムを袋へ戻した。
「……もういいよ」
そのまま出口へ向かい、自動ドアの向こうへ消えていった。
店長が列へ向き直った。
「大変お待たせしました。次の方、どうぞ」
止まっていた列が、ようやく動き始めた。
私は台の下で、力の入っていた手を一度開いた。
先頭にいた年配の男性が商品を置きながら、小さな声で言った。
「大変だったね」
私は「ありがとうございます」とだけ返した。
その一言で、ずっと上がっていた肩が少しだけ下がった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














