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2026.09.12(Sat)

「今度は、お子さんのほうを見てあげてください」入学式でおしゃべりが止まらない保護者。だが、先生が注意した結果

「今度は、お子さんのほうを見てあげてください」入学式でおしゃべりが止まらない保護者。だが、先生が注意した結果

開式を待つ間に、始まっていた話

娘の入学式の日、体育館には朝の冷気がまだ少し残っていました。私は保護者席のパイプ椅子に座り、開式を待っていました。

前の列から、楽しそうな話し声が聞こえてきます。

「そのバッグ、素敵ですね。どちらのですか?」

「これですか?今日くらいしか使う機会がないから、久しぶりに出してきたんです」

最初はそんな軽い会話でした。

けれど、かばんから指輪、コートへと話題が移り、そのうち「どこで買ったのか」「いくらくらいだったのか」という話になっていきました。

受付でも似たようなことがありました。

名簿に名前を書いていると、近くにいた保護者が私の手首を見て声をかけてきたのです。

「その時計、かわいいですね。どちらのですか?」

「これですか?母から譲ってもらった古いものなんです」

「あ、そうなんですね。素敵ですね」

渡り廊下でも、別の人から同じ時計について聞かれました。

悪気があるようには見えません。ただ、私は少しだけ疲れていました。

娘が中学生だったころにも、保護者が集まると似たような空気になることがありました。

中学3年だった前年、修学旅行の話題になったときもそうでした。海外へ行くかどうかで家庭ごとに事情が違い、娘はそういう話になると、いつの間にかその場を離れることがありました。

子どもに気をつかわせているのは、案外、大人のほうなのかもしれない。

そんなことを考えている間も、前の列では持ち物の話が続いていました。

先生が口にした、同じ言葉

開式が近づくと、担任の先生が名簿を手に、保護者席の前と体育館の入口を行き来し始めました。

前の列では、まだかばんの話が続いています。

先生が近くを通ったとき、一人の保護者が自分の服を見ながら笑いました。

「入学式って、親まで何を着ていこうか迷いますよね」

先生も笑って答えました。

「分かります。でも今日は、制服が主役ですね」

周りから小さな笑い声が上がりました。

それが1度目でした。

少しして、先生がまた入口の様子を確認しに戻ってきました。

今度は近くの保護者が、「制服、少し大きめに買いました?」と隣の人に話しています。

先生がその声を聞いて、思い出したように言いました。

「そうそう。今日は制服が主役ですね。まだ袖から指先しか出ていない子もいましたよ」

「うちもです。昨日、袖を折るか迷いました」

「うちはズボンがまだちょっと長くて」

それまで持ち物の話をしていた人たちも、いつの間にか子どもの制服の話をしていました。

2度目でした。

やがて体育館の外から、子どもたちの足音と話し声が聞こえてきました。

先生は名簿を閉じると、入口を見てから保護者席へ向き直りました。

「そろそろ入ってきますよ」

そして少し笑って、こう続けました。

「今日は制服が主役ですね。今度は、お子さんのほうを見てあげてください」

3度目でした。

それまで続いていた話し声が、すっと止まりました。

保護者席の視線が一斉に入口へ向きます。

真新しい制服を着た子どもたちが、少し緊張した表情で体育館へ入ってきました。

私も娘を探しました。

少し大きめの上着を着て、前の子について歩いてくる姿を見つけた瞬間、それまで誰がどんなかばんを持っていたのかなんて、もう気になりませんでした。

式が終わり、昇降口へ向かっていると、隣に座っていた保護者が私の横に並びました。

「先生、同じこと3回言ってましたよね」

私も笑いました。

「やっぱり数えてました?」

「数えちゃいました。最後は、ちょっと効きましたね」

「私も、あれで前を見ようって思いました」

その人は「じゃあ、また」と手を上げ、自分の子どものところへ歩いていきました。

次の参観日にも、保護者同士で持ち物の話になる場面はありました。

でも私は、無理に話を合わせなくてもいいと思えるようになっていました。

誰が何を持っているかより、その日、娘が教室でどんな顔をしているのか。

私には、そのほうがずっと気になることでした。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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