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2026.09.13(Sun)

「ご両親も喜ぶでしょう?」父の葬儀で続いた孫の話。だが、父の若いころの写真が回り始めた瞬間

「ご両親も喜ぶでしょう?」父の葬儀で続いた孫の話。だが、父の若いころの写真が回り始めた瞬間

お茶が二巡したころ

父の葬儀は、午前中で終わる小さな式だった。

式がひと通り終わると、親戚十人ほどが控えの間に集まり、折り詰めを囲んだ。私は1歳になったばかりの下の子を抱いて、夫と並んで座っていた。

親戚づきあいはもともと薄く、顔を合わせるのは何年ぶりかという人も多い。お茶が配られると、話は自然と近況へ移っていった。

「あら、大きくなったねえ。ちょっと抱かせてもらってもいい?」

「どうぞ。最近、ずっしり重くなってきましたけど」

そう答えると、周りから小さな笑い声が上がった。

父の話があまり出ないことを、私はそれほど気にしていなかった。静まり返っているより、にぎやかなほうが父らしい気もしていたからだ。

お茶が二巡したころ、父の兄の妻にあたる伯母が、私の腕の中の子を見ながら口を開いた。

「うちはね、息子のところがまだなのよ」

「娘の子もかわいいんだけどね。息子のところにもいたらなあって、つい思っちゃうの」

近くにいた親戚が「そうなの」と相づちを打ったが、伯母の話はまだ続いた。

「でも、こうやって孫を連れてきてもらえると嬉しいでしょうね」

そう言って、今度は夫のほうを見る。

「ご両親も喜ぶでしょう?」

夫は少し困ったように笑った。

「そうですね。近いので、顔はよく見せに行ってます」

「やっぱりそうよね。親はそれが嬉しいのよ」

夫は「まあ、そうですね」とだけ返し、湯呑みに手を伸ばした。

その話はまたにしましょう

伯母に悪気があるようには見えなかった。ただ、自分の息子にも子どもがいたら、という話が何度も続くうちに、私は少し落ち着かなくなってきた。

夫も返事に困っている。

葬儀の日に言い合いになるのは嫌だった。それでも、このまま聞いているのも違う気がした。

私は膝の上の子を抱え直して、伯母を見た。

「伯母さん、ごめんなさい。今日は父の話をしたいな」

伯母は一瞬黙り、それから「ああ……そうね」と小さくうなずいた。

そのとき、廊下側に座っていた親戚がこちらを向いた。ずっと同じ話を聞いていた人だった。

「そうね。その話はまたにしましょう。そういえば、昔の写真を持ってきたんじゃなかった?」

責めるような言い方ではなかった。

「あ、そうだった」

別の親戚がそばに置いていた封筒を手に取り、古い写真を何枚か取り出した。

「わあ、若いねえ」

「これ、何歳くらいのころ?」

伯母も写真をのぞき込み、「このころは髪がこんなにあったのね」と笑った。

さっきまで孫の話をしていたことを、誰も蒸し返さなかった。控えの間には、父の若いころの話が少しずつ戻ってきた。

しばらくして、私は子どもを抱いたまま控えの間を出た。白い花に囲まれた父の写真の前で、小さな手をそっと開く。

「おじいちゃんに、ばいばいしようか」

子どもは私の顔を見上げてから、小さな手をゆっくり二回振った。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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