「早い者勝ちでしょう」幼稚園の運動会で交代を拒んだ父親。だが、親子競技から戻ってきて見た光景
最前列から動こうとしない父親
息子が通う幼稚園の運動会でのことです。
事前に配られたプリントには、撮影エリアの最前列は、自分の子どもが出る競技のときだけ利用し、保護者同士で交代するように書かれていました。
ところが開会式が終わると、ひとりの父親が最前列の真ん中に脚立を立て、その隣に大きな三脚まで広げたのです。
ほかの学年の玉入れやダンスが始まっても、その父親は動こうとしません。
後ろの保護者が少し前に出ようとすると、振り返って舌打ちをする始末。私も息子の出番が近づくにつれ、困っていました。
すると、帽子をかぶった別のお父さんが声をかけました。
「すみません。次、うちの子の学年なんですけど、交代してもらえませんか?」
「いや、こっちもずっと撮ってるんで。無理ですね」
「でも、競技ごとに交代する決まりですよね?」
「先に来たのはこっちですから。早い者勝ちでしょう」
父親はそう言うと、またカメラに顔を近づけました。
帽子のお父さんは困った顔で引き下がり、私も三脚の脚の間から息子の姿を探すしかありませんでした。
戻ってきた父親が見た光景
しばらくすると、親子競技の呼び出しがかかりました。
先ほどの父親は慌てて入場門へ向かいましたが、脚立と三脚は最前列に置いたままです。
そこへ、エプロンをつけた先生が通りかかりました。
先生は最前列に残された機材と、その後ろで待っている保護者たちを見て、近くのお父さんたちに声をかけました。
「すみません。ここに脚立があると危ないので、後ろへ移すのを手伝っていただけますか?」
先生の指示で脚立と三脚は後方へ運ばれ、次の競技を待つ保護者たちが最前列に案内されました。
私も帽子のお父さんと並び、ようやく前に立つことができました。
その後、親子競技を終えた父親が戻ってきました。
ところが、自分がいた場所には別の保護者たちが並んでいます。父親は足を止め、辺りを見回しました。
「えっ、ちょっと……俺の脚立は?」
すると先生が近づき、落ち着いた声で説明しました。
「危ないので、後ろへ移しました。最前列は競技ごとに交代していただく決まりなんです」
「いや、でも……こっちは朝からずっとここで撮ってたんですよ?」
「そうでしたか。ただ、後ろの方が見えなくなってしまいますので」
先生は後方に置かれた脚立へ手を向けました。
「後方でお願いします」
「……あ、はい」
父親は何か言いたそうに口を開きましたが、それ以上は何も言わず、脚立のほうへ歩いていきました。
やがて合図の音が鳴り、子どもたちが一斉に走りだしました。
隣では帽子のお父さんが大きく手を振っています。私も思いきり声を出して息子を応援しました。
ゴールへ駆け込む息子の笑顔を真正面から見ることができ、ようやく運動会を心から楽しめた気がしました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














