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2025.06.27(Fri)

「私の声で、子どもが震えませんように。」――毒親育ちが母になった日【短編小説】

 

母からのLINEが鳴るたび、呼吸が浅くなる

「今週末、来れないの?孫の顔、最近見てないよ?」

スマホの画面に、母からのLINEが光る。
すぐ返せば「忙しいのに大丈夫?」、
少し間を置けば「冷たいね」と刺される。
どちらにしても、胸のあたりが重たくなる。

私、もう子どもも産んで、家族もいるのに。
それなのに、母の機嫌にまだ怯えている。
30代になっても、心のどこかに“あの人の支配”が残っている。

反射的に出る「怒りの声」に、私自身が震える

2歳の息子が牛乳をこぼした夜。
私は瞬間的に、怒鳴っていた。

「何やってんの、もう!!」

その声に、私が驚いた。
それは、まるで母の声だった。

――ああ、私、やってる。
やられたことを、そのまま繰り返してる。

子どもは黙って、しゅんとした。
その小さな背中を見て、急に涙が止まらなくなった。

私を「母親」にした人が、まだ私を娘のままにしている

私の母は、典型的な毒親だった。

子どもをコントロールし、自分の思い通りにならないと怒鳴る。
私が何かを主張すると「恩知らず」「誰が育ててやったと思ってるの」と返された。

「子どもを産んだなら、立派な母親になりなさい」
「親に向かってその口の利き方は何?」
未だに、私が何か反論すると、そんなふうに言われる。

私の中の“娘としての私”は、母の前でまだ成長できていない。
母は、私を母親としては見ていない。ただ、都合のいい「娘」のまま扱っている。

絶縁という選択肢、罪悪感という鎖

距離を置くことも考えた。
でも、「孫に会わせないなんて、ひどい母親だ」と言われると、足がすくむ。
私が母と疎遠にしていることで、子どもに何か悪影響があるんじゃないか――
そんな風に自分を責めてしまう。

毒親育ちが親になるって、
“子どもを育てる”と“自分を育て直す”が同時進行になることだと思う。

私は、子どもを育てながら、私自身の心の穴を埋め直している。
でも、簡単には埋まらない。
あの人はまだ、私の心の中に大きな影を落としてくる。

私の声で、子どもが震えませんように

「大丈夫、大丈夫だよ」
そう言って、子どもの背中を抱きしめる夜がある。
過去の私が欲しかった言葉を、今の私が届ける。
そのたびに、自分の中に小さな癒しが生まれる。

私の母がくれなかったものを、私は子に渡していく。
完璧じゃなくていい。
でも、せめてあの連鎖だけは、止めたい。

母の声を思い出す夜は、まだある。
でも、その声に飲み込まれないように、
私は今日も、自分の声で子どもを守っている。

終わりに

母になった今、私はやっと知った。
「子どもは、親の顔色を見なくていい」
その当たり前を、私はこれから作っていく。
少しずつでも、手探りでも――私の代で、終わらせる。

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