「これくらい別にいいでしょ」満員電車に響く動画の音。注意した時に返ってきた一言に感じた本音
満員の車内に、突然大きな音が流れた
その朝の車両は、腕を動かすのも難しいほど混んでいた。
扉が閉まる直前に一人の男性が乗り込み、私から吊り革一つぶんほど離れた場所に立った。
発車して間もなく、突然、動画らしい大きな音声が流れ始めた。
最初は誰かの着信音かと思った。しかし音は止まらない。男性が手にしているスマートフォンの画面から、笑い声や効果音が次々と聞こえてきた。
イヤホンはしていなかった。
「結構大きいね…」
「イヤホン忘れたのかな」
近くから小さな声が聞こえた。
男性自身には周囲の反応が聞こえていないのか、画面を見たままだった。
そのとき、男性の正面に立っていた年配の男性が声をかけた。
「すみません。音、少し下げてもらえませんか」
男性は一度だけ顔を上げたが、返事をしなかった。
動画の音もそのままだった。
年配の男性は少し迷ったあと、もう一度声をかけた。
「聞こえてますよね。みんな乗ってますから、もう少し小さくしてもらえませんか」
すると男性はようやくスマートフォンから目を離した。
「これくらい別にいいでしょ」
少しいら立ったような声だった。
年配の男性が「でも、かなり響いてますよ」と返すと、男性はさらに眉を寄せた。
「だったら聞かなきゃいいじゃないですか」
その声は、近くにいた私にもはっきり聞こえた。
年配の男性は一瞬黙り、それ以上は何も言わなかった。
周囲からも、続けて注意する人はいなかった。
その後の10分、誰も注意しなかった
そこから私が降りる駅までは、10分ほどだった。
動画の音は相変わらず聞こえていた。
少なくとも私の周りでは、それ以上その男性に声をかける人はいなかった。
視線を落とす人もいれば、少しでも音から離れようと体の向きを変える人もいた。
私も「もう少し静かにしてほしい」とは思っていた。
けれど、先ほどの返し方を見たあとでは、自分から声をかける勇気は出なかった。
やがて降りる駅に着いた。
「すみません、降ります」
前に立っていた人が振り返った。
「あ、どうぞ」
少し体を寄せてもらい、私は人の間を抜けてホームへ出た。
扉が閉まる前に振り返ると、年配の男性は少し離れた位置に立っていた。
スマートフォンからは、まだ動画の音が流れていた。
扉が閉まり、電車が走り出した。
注意した人が間違っていたとは思わない。
ただ、一度強く返されてしまうと、周りにいる人まで声をかけにくくなってしまう。あの車内で何も言えなかった自分のことも含めて、今でも時々思い出します。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














