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2026.10.23(Fri)

「お怪我はございませんか」ホテルの朝食会場で袋が破けた母親。だが、スタッフに声をかけられたら気まずくなったワケ

「お怪我はございませんか」ホテルの朝食会場で袋が破けた母親。だが、スタッフに声をかけられたら気まずくなったワケ

減らない料理と、ふくらんでいく袋

妻と旅行に出かけたとき、泊まったホテルの朝食会場での出来事です。

朝の会場は宿泊客で混み合い、パンや果物の前には列ができていました。

私たちの前には、両親と小学生の子どもふたりの、4人家族が並んでいました。

料理を選んでいる間、父親が皿に山盛りの料理をのせ、席へ運ぶ姿を何度も見かけました。

私たちも料理を取って席に着くと、近くにその家族が座っていました。

テーブルには皿がいくつも並んでいます。ところが、料理はほとんど減っていません。

「ねえ、あれ、全部食べるのかな」

妻が小声で言ったとき、家族が席を立つ支度を始めました。母親は布の袋を広げ、皿に残っていたパンや果物を次々と入れていきます。

「お母さん、それ持って帰るの?」

子どものひとりが尋ねました。

「いいのよ。みんなやってるんだから、気にしないの」

母親はそう答え、袋に詰める手を止めません。

通りかかった年配の客が袋を見て眉をひそめると、母親は少し声を大きくしました。

「宿泊代に入ってるんだから、もらって当然でしょ」

妻は小さくため息をつきました。母親が袋の口をしばるころには、布が張るほど中身が詰まっていました。

出口の手前で破れた袋

やがて家族は席を離れ、朝食会場の出口へ向かいました。

出入口には、これから食事をする客の列が続いています。私たちの席からも、家族がその前を通る様子が見えました。

そのときです。

母親が持っていた袋の底が、びりっと破れました。

詰めていたパンと果物が床に落ち、果物が待っていた客の足元へ転がっていきます。

「わっ!」

列の先頭の客が慌てて足を引きました。周囲の視線が集まり、母親は破れた袋を持ったまま立ち尽くしていました。

すぐに若い男性スタッフが駆け寄り、母親に声をかけました。

「お怪我はございませんか」

「え、ええ……大丈夫です」

スタッフはうなずくと、その場にしゃがみ、床に落ちたパンや果物を拾って回収用の箱に入れ始めました。袋の中身を持ち帰ろうとしたことについては、何も言いません。

「ちょっと、それ……」

父親が口を開きかけましたが、周囲を見て、そのまま黙ってしまいました。母親も声を出さず、破れた袋を握っています。

最後の果物が拾われると、家族は持ち帰るはずだった食べ物を残し、うつむいたまま会場を出ていきました。

スタッフが入口の脇へ戻ると、止まっていた列も再び動き始めました。

私と妻は顔を見合わせ、コーヒーを飲みました。

「みんなやってるわけじゃないのにね」

妻の言葉に、私は黙ってうなずきました。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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