「あなた、転職するんだってね」勝手な噂をばら撒くママ友。だが、ママ友に訪れた自業自得の結末とは
園庭で響いた一言
その日、幼稚園のお迎えの園庭で、ほとんど話したこともないママからいきなり声をかけられた。
「あなた、転職するんだってね」
耳を疑った。私の転職活動は、家族以外の誰にも打ち明けていない。
発信源は、すぐに見当がついた。グループの中で誰よりも顔が広い、いわゆる情報通のママだ。誰がどこに勤め、子どもが何を習っているか、何でも把握している人だった。
「あそこのお宅、下の子も同じ教室に入れるみたいよ」
送り迎えのたび、その人の口からは誰かの近況が次々とこぼれ落ちる。最初は世話好きで親切な人だと思っていた。
悪気のない顔で広げる人
思えば、私が世間話のついでに漏らしたことが、いつも巡り巡って別のママに伝わっていた。最初はただ世話好きなだけかと思っていたが、限度を超えていた。
誰かが言った何気ない一言が、その人を通ると一晩で園じゅうの話題になる。自分の口から出た言葉が、知らないうちに値踏みされている。そう気づいてから、私は当たり障りのないことしか話せなくなっていた。
その情報通の人をつかまえて、転職の件を尋ねた。
返ってきたのは、こんな言葉だった。
「みんな知ってると思ってたよ」
悪気がないのが、いちばん厄介だった。私は深呼吸して、まっすぐ目を見て言った。
「誰にも話してませんけど」
その人は一瞬きょとんとして、それから言葉に詰まった。頬がこわばり、視線が泳ぐ。
「あ、そう……勘違いかな」と小さくつぶやいて、その場を離れていった。
情報源が干上がった日
やり取りを近くで見ていたママが、後で耳打ちしてくれた。
「実はうち、習い事のことを勝手に言いふらされて困ってたの」
同じ経験をしていた人は、想像以上に多かった。それぞれが少しずつ、その人と距離を置き始めていたのだ。
潮が引くように、情報通のママの周りから人がいなくなった。誰も大切な話をしなくなれば、新しいネタは入ってこない。
あれほど何でも知っていた人が、今では一番何も知らない人になった。
すれ違いざまに目が合っても、その人はもう以前のように話しかけてこない。気まずそうに会釈をして、足早に去っていく。
あれほど輪の中心にいた人が、今はそっと端に立っている。
誰かの秘密を握ることで居場所を作っていた人は、その秘密が誰からも集まらなくなった途端、何も持たない人になってしまう。
私はようやく、安心して園庭に立てるようになった。当たり障りのない天気の話を、心から笑ってできるようになったのだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














