「洗濯物は後でやろうと思ってた」頼んだことを放置し続けた夫。だが、できないなら先に言ってと本音を告げた結果
「後でやる」で終わる休日
休日の夕方、出かける前にベランダを指さして、私は夫に声をかけた。よく乾いた日で、タオルもシーツも風にふくらんでいた。
「日が沈む前に、これだけ取り込んでおいて」
「わかった、任せて」
夫はソファに寝そべったまま、そう答えた。頼みごとはそれ一つ。それだけ言って、私は玄関を出た。
用事を済ませて帰ったのは、あたりがすっかり暗くなってからだった。家の前で見上げると、ベランダには洗濯物が並んだままだ。物干し竿の影が、街灯に照らされて壁に伸びていた。
ドアを開けると、テレビの音が流れている。夫は出かけたときと同じ姿勢で、スマホを見ていた。テーブルには空のグラスと、封を切ったお菓子の袋。数時間のあいだ、この部屋の景色はひとつも動いていなかった。
「洗濯物、そのままだね」
「洗濯物は後でやろうと思ってた」
目も上げずに返ってきた一言に、私は何も言わずベランダへ向かった。
取り込んだタオルは、夜の湿気を吸って重たかった。日なたのにおいは消えて、指先に冷たさだけが残る。台所は当然、火も水も止まったまま。私は結局、鍋を火にかけながら洗濯物を畳んだ。
翌朝、はっきり告げた
その夜は何も言わなかった。言えば、疲れているところに責められたという話にすり替わるのが分かっていたからだ。
布団に入ってからも、湿ったタオルの感触が指先に残っていた。同じことは何度もあって、そのたびに拾ってきたのは私だ。今度こそ、朝いちばんに言おうと決めた。
翌朝、コーヒーを二つ置いてから、私は椅子に座り直した。
「昨日のことだけど、後回しにされると結局そのまま私の負担になるの。できないなら、最初に断ってほしい」
夫はカップに手を伸ばしかけて、動きを止めた。
「そんな、断るほどのことじゃないだろ。忘れてただけで」
「忘れるなら、はじめから引き受けないで」
声を荒らげたわけではない。それでも夫は、返す言葉を探して黙り込んだ。カップを持ったまま、視線だけが泳いでいる。
「……悪かった。次からはすぐやるよ」
「うん。無理なときは、そう言ってくれるだけでいい」
気にしないで、とは言わなかった。ここで流したら、また同じ夕方が来るだけだからだ。
それからの夫は、少し変わった。頼んだことを、その場で片づけるようになったのだ。
「もう入れといたよ。畳むのも途中までやった」
できない日には、こう先手を打ってくるようになった。
「今日は動けそうにない。だから受けないでおく」
正直に言われるほうが、こちらは何倍も動きやすい。頼む側が結局全部やる、あの休日の夕方は、それきり我が家から消えた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














