「お父さん、洗剤の場所きいてきた」外面だけは良かった夫。だが、家事を任せた結果、思わず笑ったワケ
熱の出た日曜
日曜の昼、私は起き上がれずに横になっていた。
体が重い。額に手を当てると、自分の熱で指が熱かった。天井の木目が、ゆらゆらと動いて見える。
枕元に立った夫の第一声が、これだった。
「腹減ったんだけど、何かないの」
返事をする気力もなかった。
「今日は無理。お願いだから、自分でやって」
「えー、俺そういうの分からないんだよ」
分からない、と夫は言った。この人は、外に出るとまるで違うことを言う。親戚の前でも、近所の人の前でも、決まって胸を張るのだ。
「うち、家事も育児も分担してますから」
そう話す夫の隣で、私は毎回黙っていた。実際には、洗濯機を回したこともなければ、風呂を洗ったこともない。
そこまで思い出したら、熱のせいか、腹が据わった。
「じゃあ今日1日、全部やってみて。分担してるんでしょう」
夫は渋い顔をしたが、娘が横で見ていたからか、何も言い返さなかった。
音を上げた翌朝
それから半日、家の中は騒がしかった。
換気扇の音、皿の当たる音、レンジの電子音。娘が様子を見に来ては、私に実況していく。
「お父さん、洗剤の場所きいてきた」
「お父さん、洗濯物を全部ハンガーに掛けようとしてる」
素直に私に聞いてこない夫に思わず笑ってしまいました。
夕方、廊下から長いため息が聞こえた。
私を呼びに来るかと思ったが、来なかった。夜になっても、風呂の掃除をする音が続いていた。
翌朝、熱の引いた私が台所に立つと、椅子に沈んだ夫が、こちらを見ずに言った。
「飯も洗濯も、正直きつかったよ」
手を止めて、夫の顔を見た。たった1日で、と言いかけた私に、夫が先に続けた。
「1日でも、終わりが来ないんだよ。片付けても、また出てくる」
「うん。それが毎日なの」
夫は言いかけて、口を閉じた。湯呑みを持ち上げて、また置いた。
「……お前、ずっとこれをやってたのか」
「ずっと。あなたが外で分担してますって話してた間も、ずっと」
返事はなかった。娘がトーストをかじりながら、横から言った。
「お父さん、昨日は一日でギブアップだったもんね」
夫の耳が赤くなった。反論の言葉を探していたようだが、最後まで出てこなかった。立ち上がって、自分の皿を流しに運んだだけだった。
それきり、夫は外で「分担してます」と言わなくなった。代わりに、日曜の朝は洗濯機の前に立つようになった。
手際は悪い。タオルの畳み方はいまだに独特だ。それでも、私が「これお願い」と言う前に動く日が増えた。
先日、近所の人に「旦那さん、家のことされるの?」と聞かれて、夫は少し困った顔で答えていた。
「……教わってる最中です」
その横で、私はもう黙っていなかった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














