「他の子には内緒ばい。あんたが可愛いけんね」特別だと言われた私のお年玉。だが、従兄弟と比べて思わぬ事実を知った
秘密のポチ袋
親戚が一堂に会する集まりの、前の日のことだった。母に連れられ、僕は隣に住むひいおばあちゃんの家へ、一足先に挨拶に立ち寄った。
縁側の日なたで、ひいおばあちゃんは膝掛けをかけて座っていた。僕が名前を告げると、しわだらけの顔が、くしゃっとほころんだ。
「大きゅうなったねえ。ほら、こっちおいで」
手招きされて隣に腰かけると、小さなポチ袋を握らされた。中身は5000円。小学生の財布には収まりきらないほどの、大きな一枚だ。
「他の子には内緒ばい。あんたが可愛いけんね」
「うん、内緒にする」
耳打ちするような小声だった。僕は世界でいちばん得をした気分で、その袋を後生大事にしまい込んだ。
開けて分かったこと
翌日、家が親戚でにぎわった。
もらったお年玉を、僕は一つ下の従兄弟とこっそり数え比べる。
大人たちの輪をすり抜けて、僕らはもらったばかりのポチ袋を、宝物のように抱えていた。どちらが多いか、確かめずにはいられなかったのだ。
ところが、従兄弟のポケットからも、見慣れた柄の袋が出てきた。まぎれもなく、ひいおばあちゃんのポチ袋だ。
「それ、開けてみてよ」
せがむと、従兄弟はあっさり袋の口を開いた。のぞき込んだ僕は、思わず声を上げてしまった。
「1万円が入ってた、僕の倍あるよ」
「同じ袋なのにね」
「特別」と言われていたのは、僕だけではなかったらしい。しかも金額は、こちらがちょうど半分。あのときの膨れっ面は、今でも家族の語り草になっている。
数えていなかったのは
大人になって、ようやく合点がいった。ひいおばあちゃんは、ひ孫の一人ひとりに、同じような台詞を手渡していたのだ。
「あんたが一番の宝ばい」
その一言で、どの子もぱっと目を輝かせる。その顔を順ぐりに眺めるのが、あの人にとってのいちばんのごちそうだったのだろう。
子どもの頃は、金額の大小が世界のすべてだった。あの人が配っていたのは、お金ではなく「あんたが特別」という魔法の言葉だったのだと、今ならよく分かる。
袋に入れた金額の差なんて、本人はたぶん覚えてすらいなかった。多いも少ないもなく、ただ全員を等しく可愛がっていただけの話だ。
今でも親戚が集まると、あのポチ袋の思い出で必ず盛り上がる。金額の差は、もう誰も本気にしていない。何度でも笑える、優しい記憶だ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














