「泣くなら、もう帰るよ」公園で転んだ子供に響いた母親の声。通りすがりの私が忘れられなかった理由
公園から聞こえてきた泣き声
その日、私は買い物を終え、近所の公園を通って家へ帰るところでした。
広場の近くまで来たとき、遊具のほうから幼い子どもの泣き声が聞こえてきました。
見ると、小さな子が地面にしゃがみ込んでいます。どうやら遊んでいる途中で転んでしまったようでした。
すぐそばには、母親らしき女性が立っていました。
「痛かった…」
子どもは涙を流しながら、母親のほうへ手を伸ばしています。
すると女性は、少し疲れたような表情で言いました。
「泣くなら、もう帰るよ」
思った以上に強い声だったので、私は思わず足を止めてしまいました。
「立って。もう大丈夫だから」
女性がそう促しても、子どもはなかなか立ち上がれません。
近くのベンチにいた人たちも、一瞬だけそちらを見ていましたが、すぐに視線を戻していました。
その一言だけが耳に残った
「そんなことで、ずっと泣かないの」
女性はもう一度そう言いました。
子どもは泣くのを我慢しようとしているのか、しゃくり上げながら母親の手を握りました。
私はその様子を見ながら、少し胸が苦しくなりました。
転んだ直後くらい、もう少し優しく声をかけてもいいのではないか。そんな考えが頭をよぎったのです。
ただ、すぐに「自分には見えていない事情もある」とも思いました。
私は、たまたま数分間その親子を見かけただけです。その日、母親が朝からどんな時間を過ごしてきたのかも、子どもとの間にどんなやり取りがあったのかも知りません。
何度言っても帰ろうとしなかったのかもしれないし、母親自身も疲れ切っていたのかもしれません。
しばらくすると、女性は子どもの手を取りました。
「ほら、帰ろう」
子どもはまだ遊具が気になるようで、何度か後ろを振り返りながら歩いていきました。
私はその親子を追いかけることも、声をかけることもできず、そのまま公園をあとにしました。
子育てをしていれば、いつでも穏やかにいられるわけではないのだと思います。それでも、あの日耳にした強い声と、泣くのをこらえながら歩いていた小さな後ろ姿は、しばらく頭から離れませんでした。
ほんの数分の出来事だったからこそ、あの親子が家に帰ったあとには、いつもの穏やかな時間に戻っていてほしいと思いました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














