「あとから予約を入れないでもらえませんか?」受付で繰り返される保護者の苦情。だが、受付に貼られた一枚の紙で変わったこと
一対一になることを期待していた保護者
子ども向けの英会話教室で受付をしていた頃のことです。
レッスンはもともとグループ形式でした。ただ、平日の空いている時間帯は予約が一人しか入らず、結果的に先生と一対一になることもありました。
それを気に入って、できるだけ空いている時間を選んで予約する保護者の方がいました。
もちろん、予約を受けた時点では一人でも、そのあと同じ時間に別の生徒さんの予約が入ることがあります。
ある日も、受付に来るなり少し不満そうな顔で言われました。
「この時間、予約したときはほかに誰もいなかったですよね?」
「はい、その時点ではお一人でした」
そう答えると、ため息をつかれました。
「できれば、このまま一人で受けさせたかったんですけど。あとから予約を入れないでもらえませんか?」
私は困りました。気持ちは分かりますが、もともとグループレッスンです。ほかの生徒さんから予約が入れば、受付として断ることはできません。
「申し訳ありません。グループでのレッスンですので、ほかの方からご予約が入る場合もありまして……」
そう説明しても、その方はなかなか納得してくれませんでした。
悪い方だとは思っていませんでした。せっかくなら子どもに先生と長く話してほしい、少しでも充実した時間にしてほしい。そんな思いが強かったのだと思います。
ただ、同じやり取りが続くうちに、私はその方が受付へ近づいてくるだけで緊張するようになっていました。
「受付の人の判断みたいになってるね」
ある日、私がまた説明しているところを見た上司が、あとで声をかけてきました。
「毎回、あなたが謝る形になってるね」
私は思わず、「どう説明したら分かってもらえるのか、もう自信がなくて」とこぼしました。
すると上司は少し考えてから言いました。
「あなた個人の判断じゃないんだから、教室の案内として出そうか」
そして、
「『予約したときにお一人でも、あとから同じ時間帯に別の予約が入ることがあります』って、受付に紙を貼っておきましょう」
と決めてくれました。
用意されたのは、本当に一枚の紙でした。
グループレッスンであること。予約時点で一人でも、同じ時間帯にほかの生徒の予約が入る場合があること。それだけを簡潔に書き、受付の目につくところに貼りました。
私が謝り続けなくてもよくなりました
数日後、その保護者の方がまた受付へ来ました。
「今日も、ほかの子が入ってるんですね」
少し不満そうな声でしたが、すぐに貼り紙へ目を向けました。
私は以前のように慌てて謝るのではなく、
「はい。こちらにもご案内しているとおり、同じ時間帯にご予約が入ることがあります」
と伝えました。
その方はもう一度紙を読み、少し黙ってから、
「そういう決まりなんですね。分かりました」
とだけ言いました。
それから、同じことで強く言われることはなくなりました。
上司はその方を叱ったわけでも、特別扱いを断るために強い言葉を使ったわけでもありません。ただ、私一人が説明していたことを、教室全体の案内として見える形にしてくれただけでした。
それだけで、受付に立つときの気持ちはずいぶん楽になりました。
以前は誰かが近づいてくるたびに身構えていましたが、少しずつ、いつもの調子で子どもたちを迎えられるようになりました。
「こんにちは。今日も楽しんできてね」
そう笑って声をかけられるようになったとき、私はようやく、受付らしい仕事に戻れた気がしました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














