「レシートも分けてもらえますか」10人のお客様を個別会計。だが、行列が出来た時の店長の対応とは
厨房から店長が出てきた
飲食店で働いていたころの話です。昼どき、奥のテーブルにいた10人のお客さまのグループが、食事を終えて会計を始めました。
皆さんでまとめて払うのではなく、それぞれが自分の分だけ支払いたいようでした。
「私はこの料理と飲み物です。レシートも分けてもらえますか」
一人のお会計が終わると、また別の方が席から立ってレジへ来られます。そのたびに伝票を見ながら、どの料理が誰の分なのかを確認し、金額を計算していました。
どなたも間違えないように払おうとしているだけです。ただ、それを繰り返しているうちに、通常のお客さままでレジの前に並び始めました。
後ろのお客さまが腕時計を見る姿が目に入り、私は焦っていました。
厨房から店長が出てきたのは、そのときです。
店長はレジの前と奥のテーブルを見てから、グループのお客さまに声をかけました。
「レジではなくお席でお伺いします。こちらへどうぞ」
個別会計を断るわけではありませんでした。まず席で、それぞれが何を注文したのかを確認して、支払う金額を分けておくというのです。
「お支払いは、こちらで確認できた方から順番にご案内します」
グループの方々はうなずいて、いったん席へ戻りました。
店長は私に、短く言いました。
「レジは通常のお会計を続けて」
私は「はい」と答えて、次に並んでいたお客さまをお呼びしました。
レジの音が、いつもの間隔に戻った
店長は奥のテーブルで伝票を広げ、一人ずつ注文したものを確認していました。
「これは私です」「飲み物はこちらです」
そうして支払う金額が分かった方から、店長が個別に金額を書いた紙を渡していきます。
その間、私は通常のお客さまのお会計を進めることができました。
団体のお客さまも、金額が分かった状態でレジに来られるので、先ほどのようにその場で伝票を見ながら確認する必要がありません。
通常のお客さまが途切れたところで一人、また少しして一人。先ほどまで止まっていた列はなくなり、レジの音もいつもの間隔に戻っていきました。
誰かが悪かったわけではありません。
グループのお客さまには、それぞれに払いたい事情があります。一方で、レジの前で一人ずつ注文内容を確認していると、後ろのお客さまを長く待たせてしまいます。
店長が変えたのは、個別会計そのものではなく、確認する場所でした。
翌週、出勤して予約表を開くと、一枚の紙が挟まっていました。
「十名以上で個別会計をご希望の場合は、事前にお申し出ください」
店長の字で、それだけが書いてありました。
それからは、大人数の予約を受けるときに会計方法を先に確認できるようになりました。
あの日、私が困っていたのは、お客さまの希望そのものではなく、その場で一つずつ対応するしかなかったことだったのだと思います。
誰かを責めるのではなく、次から困らないやり方を決める。忙しい店の中で店長がしたことを、今でもよく覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














