「若いんだから席を代われ」混んだ電車で女子高生に詰め寄った男性。隣の女性が止めたあと、黙っていた私も口を開いた
うつむいて座る女子高生の前で
去年の冬、仕事帰りの電車でのことです。夕方の車内はかなり混んでいて、私はドア脇で手すりにつかまりながら立っていました。
目の前の座席には、制服姿の女子高生が座っていました。
さっきからうつむき、時々口もとを押さえています。顔色もあまりよくないように見えました。
途中の駅で乗ってきた50代くらいの男性が、人のあいだを抜けて座席の前まで進んできました。
そして、女子高生の前で足を止めました。
「ねえ。若いんだから、席代わってくれない?」
女子高生は驚いたように顔を上げました。
「あ…」
返事に詰まっていると、男性は少しいら立ったように続けました。
「こっちだって仕事帰りで疲れてるんだよ。若いんだから立てるだろ?」
女子高生は困ったように目を伏せ、それでも立とうと腰を浮かせました。
すると、隣に座っていた女性が声をかけました。
「無理しなくていいよ。座ってて」
それから男性のほうを見ました。
「すみません。この子、さっきから具合が悪そうなんです」
男性は眉をひそめました。
「でも若いんだから、それくらい平気だろ」
「いや、今は座っていたほうがいいと思いますよ」
女性がそう返すと、男性はむっとした顔になりました。
「年上を敬えって習わなかったのか」
女子高生は何も言えず、また視線を落としました。
女性も少し困ったような顔をしましたが、引き下がりませんでした。
「年上の人を大事にするのは分かります。でも、具合が悪い子を立たせるのは違うんじゃないですか」
車内が急に静かになったように感じました。
黙っていた私も、声をかけた
私はそれまで、手すりを握ったまま黙っていました。
知らない人同士のやり取りに口を出していいのか迷っていたからです。
でも、女子高生がまた立とうとするのを見て、思わず声が出ました。
「あの…私も、座っていたほうがいいと思います」
男性が振り返りました。
「何?」
一瞬ひるみましたが、そのまま続けました。
「さっきから口もとを押さえていて、かなりつらそうなので…」
「俺だって疲れてるんだけど」
「それは分かります。でも、この子も好きで座っているわけじゃないと思います」
私がそう言うと、男性は何か言いかけて口を閉じました。
周囲の乗客もこちらを気にしていました。男性は車内を見回したあと、それ以上は何も言わず、人のあいだを抜けて車両の奥へ移動していきました。
男性が離れると、女子高生が小さな声で言いました。
「ありがとうございます…」
隣の女性は、少しほっとしたように笑いました。
「大丈夫。気にしなくていいよ」
それから私のほうを見て言いました。
「声かけてくれて、助かりました。私もちょっと怖かったので」
「私も、言うか迷いました」
そう答えると、女性は「ですよね」と小さく笑いました。
次の駅に着くまで、女子高生はそのまま静かに座っていました。
私はドア脇に戻り、ずっと力を入れていた手すりから、ようやく指をゆるめました。
最初に声を上げた女性がいたから、私も続くことができたのだと思います。ほんの短いやり取りでしたが、黙ったままで終わらなくてよかったと感じた出来事です。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














