「うちの子が残しちゃって。食べちゃって」手土産を出さずに子供が残したお菓子を出すママ友。だが、お茶会の場所が変わった瞬間
戸棚に消えていく手土産
子育てサロンで意気投合したママ友がいた。お互いの家を行き来する仲になって、しばらく経った頃の話だ。
彼女の家に行くときは、毎回お菓子を持っていく。けれど、それがテーブルに出てきたことはなかった。
代わりに私たちの前に置かれるのは、彼女の子が食べ残したお菓子の袋だった。
「これ、うちの子が残しちゃって。食べちゃって」
「あ、うん。いただくね」
封の開いたスナックや、かじりかけのクッキー。受け取った手前、断るわけにもいかない。
「もったいないし」
そういうものなのかな、と私は最初、深く考えなかった。
でも、何度行っても私のお菓子が出てきたことは一度もなくて、だんだん引っかかるようになっていった。
出てこないお土産
あるとき、数人のママで彼女の家に集まった。一人が、地元の有名なお土産を紙袋ごと差し出した。
「みんなで食べてください」
ところが、おやつの時間になっても、その紙袋は奥に置かれたまま動かない。私は思いきって声をかけた。
「せっかくだから、お土産開けようよ」
「あ?食べる?」
返ってきたのは、心底めんどくさそうな一言だった。場が静まりかえる。それでも紙袋は出てこない。
「ね、開けましょうよ」
別のママがもう一度促して、やっと紙袋がテーブルに出てきた。持参したママは、終始ばつの悪そうな顔をしていた。
人の集まる場所
その帰り道のことだ。お土産を持ってきたママが、足を止めてつぶやいた。
「私のお土産、出したくなかったのかな」
うつむく彼女に、私は明るく声をかけた。
「気にしないで。次はうちに集まろう。みんなで持ち寄りでさ」
その日から、お茶会の場所は私の家になった。持ち寄ったお菓子は全部テーブルに出して、みんなで分けて食べた。当たり前のことが、こんなに楽しいとは思わなかった。
「やっぱりこうじゃなきゃね」
「自分が持ってきたの、ちゃんと食べてもらえるとうれしいよね」
誰かのその一言に、みんなが笑ってうなずいた。気づけば、あの戸棚の家に行く人は、一人もいなくなっていた。
後日、本人が不思議そうに聞いてきた。
「最近、誰もうちに来ないんだけど」
誰も責めなかった。ただ、笑って同じことを返しただけだ。
「お茶会、楽しいよ。来なよ」
彼女は何か言おうとして、結局黙り込んだ。出し渋ったものの分だけ、人は静かに離れていく。そのことに、本人だけが最後まで気づいていないようだった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














