「古い雑誌、捨てとくわね」部屋にある私物を勝手に片付ける義母。だが、私の一言で態度が一変
本棚の前で止まった手
二人目の出産から数日。家事を手伝いに来てくれた義母が、私の部屋の本棚の前で動きを止めた。育休中とはいえ、私は保育士だ。その本棚には仕事の本が並んでいる。
断捨離好きの義母は、来てからずっと家の物を減らしていた。鍋も、子ども服も、私が止める間もなく袋に消えていく。
「古い雑誌、捨てとくわね」
10年前の保育雑誌の束を手に取り、義母はあっさりそう言った。私が新人の頃から集めてきた、現場で今も開く大切な資料だった。
「待ってください」
布団から起き上がり、私は部屋へ向かった。
穏やかに引いた一本の線
「お義母さん、それは仕事で使う資料なんです」
雑誌を抱えた義母の手を、まっすぐ見て言った。声を荒げるつもりはない。でも、ここだけは譲れなかった。新人の頃から少しずつ買いそろえ、現場で困るたびに開いてきた一冊一冊だ。古びていても、私にとっては現役の道具だった。
「私の物に触らないでください」
言いきってから、もう一度ゆっくり付け足した。勝手に処分されるのだけは、どうしても受け入れられなかった。
義母の表情がふっと固まった。雑誌を持つ手が宙で止まり、それから気まずそうに本棚へ戻される。
「……あらやだ、よかれと思っただけよ」
言葉尻は強がっていたけれど、目はもう合わなかった。義母はそそくさと雑誌を棚に戻し、部屋を出ていく。
「お茶でも、いれましょうか」
そうつけ足す声が、いつもより小さかった。台所に戻った義母は、それからもう私の部屋には近づかなかった。
夜、帰宅した夫に話すと、ほっとした顔をした。母も悪気はなくて、ただ片づけが止められないのだと夫は言う。
「母さんに言える人、なかなかいないよ。よく言った」
そう言われて、強ばっていた肩からふっと力が抜けた。我慢して飲み込んでいたら、明日にはこの本も袋の中だったはずだ。
翌日帰っていく義母は、玄関で「本、大事にね」とだけ言った。手伝いに来ていたはずの人が、私の顔色をうかがっている。その変わりように、少し笑ってしまった。
守れた本棚を見上げて、私は深く息を吐いた。線を引くって、こういうことなんだと思った。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














