「あなたは座っていてください」と婿を台所に入れない義母。だが、自分の考えを正面から伝えた結果
居間に追いやられて
結婚して数年目の正月。妻の実家に泊まり、夕食の支度を手伝おうと台所に立った時だった。
「あなたは座っていてください」
義母にやんわりと、けれどきっぱりと、台所から押し戻された。共働きだから手伝ってもらっていると妻が言っても、「うちのやり方があるのよ」の一点張りだ。
追いやられた居間には、苦手な義父がいた。
テレビを見ているだけで、会話はほとんど続かない。間が持たず、私は出されたお茶をすすってばかりいた。
そこへ、お盆を持った義姉が現れた。
「うちの家風に合わせられないと大変よ?」
笑いながらの一言だったが、棘があった。男は座っていろ、というこの家のしきたりを、冗談の形で念押しされたのだ。
昭和の価値観
男が台所に入るなんてとんでもない。女が家のことを回して当たり前。そんな昭和の価値観が、この家には、まだ濃く残っていた。
悪気がないのは、わかっている。だからこそ、たちが悪い。良かれと思って、自分たちのやり方を「正しいもの」として押しつけてくる。
台所では、妻が義母に混じって忙しく立ち働いていた。普段は私が当たり前に分担している皿洗いも、子どもの世話も、ここでは妻一人の仕事になっている。
我が家では当たり前のことが、この家ではまるで通用しない。その光景を、ただ座って眺めているのが、なんとも情けなかった。
(このまま、黙って合わせていていいのか)
私の中で、何かが固まっていった。
堂々と語った我が家
食卓に全員が揃ったところで、私は意を決して口を開いた。
「お義姉さん、さっきの家風の話なんですが」
義姉が、湯のみを持つ手を止めた。私は、できるだけ穏やかに、それでもはっきりと続けた。
「共働きの我が家では、家事も育児も二人でやっています。それが、もう普通になりつつあるんです」
義姉は、笑顔を引っ込めた。義母も、箸を止めて私を見ている。二人とも、すぐには言葉が出てこないようだった。
「だから、お手伝いさせてもらえると助かります。座って待つのは、どうにも性に合わなくて」
すると、それまで黙々と食べていた義父が、顔を上げた。
「いいんじゃないか。手が増えるなら、ありがたい話だ」
頑固一徹に見えた義父の言葉に、義母と義姉は顔を見合わせた。何か言い返そうとして、結局どちらも口をつぐむ。「家風」を盾にしていた空気は、その一言で、すっかり崩れていた。
「片付け、やりますね」
私が立ち上がると、もう誰も止めなかった。妻が、こらえきれずに小さく笑う。次に帰省した時には、私が当たり前に台所に立てるようになっていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














