「切れ目に塩が詰まってる」ママ友宅の晩酌で出された手料理→笑顔のまま見ていた彼女に凍りついた
差し出された小皿
その日は、ママ友たちとのお茶会の帰りだった。彼女に誘われるまま、私は自分の車で彼女を家まで送り、そのまま招かれて上がった。
「車だと飲めないでしょ。私だけいただくわね」
そう言って彼女は缶を開け、一人で晩酌を始めた。私はお茶をもらい、運転があるからと丁寧に断った。
彼女は気にする様子もなく、台所からいくつかのつまみを運んでくる。
「あなたのぶんも作ったから、食べて食べて」
湯気の立つ小皿が、私の前に置かれた。温かいウインナーが何本か、きれいに並んでいた。普通の、おいしそうな家庭料理に見えた。
「ありがとう、いただくね」
運転前にお腹に入れておこうと、私は気軽に箸を伸ばした。彼女は缶を傾けながら、ふふ、と小さく笑って私の手元を見ていた。
切れ目に詰まっていたもの
一本を口に入れた瞬間、私は固まった。
塩辛さが、舌を刺すように突き抜けてきたのだ。
「これ、しょっぱすぎる」
表面に塩はかかっていない。なのに、噛むほどに塩気が増していく。私は箸先で一本を割って、思わず息を呑んだ。
「切れ目に塩が詰まってる」
包丁で入れた切れ目の奥に、大量の塩が押し込まれていた。手が滑って振りかけた、という量ではない。誰かが指で、ぎゅっと中へ詰めたとしか考えられなかった。
念のため、他の皿のものも少し口にしてみた。
そちらは、ごく普通の味付けだった。塩の塊が仕込まれていたのは、私の前に置かれたウインナーだけだったのだ。
同じ笑顔のままで
恐る恐る顔を上げると、彼女は缶を片手に、にこにことこちらを眺めていた。困った顔も、申し訳なさそうな様子も、いっさいなかった。
「どうしたの?しょっぱかった?」
その声の柔らかさに、かえって背筋が凍った。指摘したところで、きっと「間違えちゃった」と笑うだけだ。
むしろ彼女は、私が顔をしかめる様子を楽しみにしていたのではないか。そう思った瞬間、この家にいることがたまらなく怖くなった。
「ごめんね、つい味見しないで出しちゃって」
そう言いながらも、彼女の口元はずっと笑ったままだった。詫びの言葉と、その表情が、まるで噛み合っていなかった。私は曖昧に頷くことしかできなかった。
「……ごめんね、そろそろ帰るね」
私はそう言って腰を上げ、逃げるように車に乗り込んだ。優しい顔で家に招いてくれた人が、その同じ手で切れ目に塩を詰めていた。
どうして、と考えても答えは出ない。いつか自分に返るのだから、仕返しをする気はない。それでも、にこやかなあの表情を思い出すたび、今も手のひらが冷たくなるのだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














