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2026.09.13(Sun)

「今さらだよね。本当にごめん」10年ぶりに会った友人。封筒に入っていた、3000円の理由とは

「今さらだよね。本当にごめん」10年ぶりに会った友人。封筒に入っていた、3000円の理由とは

3000円を出したのは、私だった

定時制の高校を卒業した日の夜、同じ学年の何人かでカラオケに行った。

昼は働き、夜に授業を受ける三年間だった。その最後の夜だったので、歌うより話している時間のほうが長かった。

そろそろ帰ろうかという空気になり、みんなで伝票を見ながら会計を始めた。

そのとき、隣にいた友人が財布の中を見て、困ったように私を見た。

「あ…どうしよう。今日、あんまり持ってきてない」

「足りないの?」

「うん。ごめん、私の分だけ先に出してもらっていい?」

友人の分は3000円ほどだった。働きながら学校に通っていた私にとって、気軽に出せる額ではない。それでも卒業の日だったこともあり、その場で断るのも気まずくて財布を開いた。

「分かった。今日は出しておくよ」

「ほんと?ごめん。ちゃんと返すから」

「うん。また会ったときでいいよ」

そのときは、近いうちにまた会えると思っていた。

けれど卒業すると、みんなの生活はばらばらになった。私はその友人の連絡先を知らず、分かっていたのは名前と住んでいるおおよその地域くらいだった。

最初のうちは、また誰かを通じて会うだろうと思っていた。それが一年、二年と過ぎるうちに、3000円のことを思い出す回数も少なくなっていった。

ただ、完全に忘れたわけではなかった。

三度目に来たとき、手に封筒があった

それから10年ほどたった春、同じ学年の集まりを知らせる案内が届いた。

出席に丸をつけるまで、少し迷った。懐かしい人には会いたい。

私は参加することにした。

当日、会場にはその友人も来ていた。

最初に私のところへ来たときは、「久しぶり。元気だった?」と笑って、仕事の話を少しした。

二度目は、近くを通ったときに子どもの話になった。

けれど、どちらのときも何か言いたそうにしているように見えた。話が途切れると、友人は「じゃあ、またあとで」と離れていった。

そして三度目。

友人は小さな封筒を手にして、私の前に立った。

「ねえ、ちょっといい?」

「うん?」

友人は封筒を差し出しながら、気まずそうに笑った。

「これ…あのときのお金」

一瞬、何のことか分からなかった。

封筒を見て、ようやく卒業の日のことが頭に浮かんだ。

「もしかして、カラオケの?」

「そう。ずっと気にしてたんだ」

「覚えてたの?」

「覚えてるよ。返すって言ったのに、そのままだったから」

封筒には3000円と、折りたたまれた便箋が一枚入っていた。

「連絡先が分からなくて、最初は何人かに聞こうとしたんだけど…途中でそのままにしちゃった」

友人は少し間を置いた。

「今さらだよね。本当にごめん」

便箋には、あの夜の日付と短い謝罪が書かれていた。

「毎年、卒業の時期になると思い出してた。今日、会えてよかった」

10年もあったのだから、もっと早く何とかできなかったのだろうか。そう思う気持ちがなかったわけではない。

けれど、友人もそのことを分かったうえで封筒を持ってきたのだと思うと、今さら強く責める気にもなれなかった。

「ずいぶん遅かったね」

そう言うと、友人は小さく笑った。

「うん。本当に」

「でも、返してくれてありがとう」

「こっちこそ。受け取ってくれてありがとう」

その日の会計は、幹事が人数で割ってくれた。

財布を出しながら、友人がこちらを見た。

「今日はちゃんと持ってきてるから」

「さすがにね」

思わず二人で笑った。

会場を出るころには、外はもう暗くなっていた。駅へ向かう途中、友人が隣を歩きながら言った。

「また会えたらいいね」

「うん。次はもう少し早く会おうよ」

「そうしよう」

10年前に残ったままだった小さな引っかかりが、その夜ようやく一区切りついた気がした。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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