「おい!処方箋もらってないぞ!」男性患者が受付で激怒。だが、私が明細を差し出して伝えた言葉
受付で耳打ちされたひと言
病院の受付で、会計を担当していたころのことです。
昼の待合室はほぼ満席で、私は隣の席の同僚と並んで受付業務をしていました。
そんなとき、年配の男性が診察室から出てきました。すると、奥へカルテを運ぼうとしていた先輩が、私のそばに寄って小声で言いました。
「あの方、気をつけてね」
どうやら、ちょっとしたことで怒り出すことがある患者さんのようです。
私は少し緊張しながら、男性をカウンターに呼びました。
ところが、保険証はすんなり出してくれます。
「処方箋のお名前、こちらでお間違いないですか?」
「ああ、合ってるよ」
受け答えも穏やかで、私は少し安心しました。
ところが、会計の入力を始めたときです。
男性は腕時計をちらりと見ると、舌打ちをしました。
そして、何も言わずに背を向け、そのまま病院の外へ歩いていってしまったのです。
「えっ……?」
あまりに突然のことで、私はとっさに声をかけられませんでした。
まだ会計は終わっておらず、処方箋も渡していません。
戻ってくるかもしれないと思い、私はひとまず会計の入力を続けることにしました。
怒鳴り声に返したひと言
入力が終わったころ、先ほどの男性が早足で戻ってきました。
そのままカウンターに身を乗り出すと、いきなり大きな声を上げたのです。
「おい!処方箋もらってないぞ!」
驚いて顔を上げると、男性は険しい表情で私をにらんでいました。
「受付が渡し忘れたんだろ!こっちは急いでるんだよ!」
さらにカウンターをたたく音が響き、待合室にいた患者さんたちも一斉にこちらを見ました。
隣の同僚も、心配そうな顔をしています。
私も一瞬ひるみましたが、慌てて言い返しても話がこじれるだけだと思いました。
そこで、ひと呼吸おいてから、男性に伝えました。
「申し訳ありません。実は、まだお会計が終わっていないんです」
「……は?」
「先ほど、お会計の途中で外に出られたので。処方箋は、お支払いのあとにお渡しします」
そう説明しながら、打ち出した明細を男性の前に差し出しました。
「本日のお会計はこちらです。お願いいたします」
男性は明細を受け取ると、しばらく黙っていました。
先ほどまでの勢いがなくなり、カウンターに乗り出していた体をゆっくり引っ込めます。
待合室では、何人かの患者さんが顔を見合わせ、小さくうなずいていました。
男性はそれ以上何も言わず、財布を取り出して支払いを済ませました。
私は処方箋を渡し、いつもどおり頭を下げました。
「お大事になさってください」
男性は目をそらし、小さくうなずくと、肩をすぼめて帰っていきました。
男性の姿が見えなくなると、隣の同僚がそっと声をかけてくれました。
「よかった……。怒鳴られても、落ち着いて対応してたね」
「いや、内心はかなり焦ってたよ」
そう答えると、ようやく肩の力が抜けました。
大きな声で責められると、こちらも動揺してしまいます。それでも、落ち着いて事実を伝えることが大切なのだと感じた出来事でした。
私は明細の控えをそろえ、気持ちを切り替えて次の会計に向かいました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














