「これ…母さん、何やってるの?」調理ばさみでペットのトイレシートを切る義母。合わない価値観に別居を決意
調理ばさみの正体
夫が台所で固まっていた。
手にしているのは、私が毎日料理に使う調理ばさみだ。
「これ…母さん、何やってるの?」
聞けば、体調が回復してきた義母が、ペットの使用済みトイレシートをそのはさみで切っているのを見たのだという。
使っていない部分がもったいない、というのが義母の理屈だった。
そのはさみは、一歳の子のうどんを切る物でもある。
背筋が冷たくなった。
同居を始めたのは、義母の体調を支えるためだった。一歳の子と犬を含む五人暮らし。
私は毎日、義母の食事や洗濯を引き受けてきた。回復を喜んだ矢先の出来事だった。
線を引いた妻の一言
夫に、本人へ伝えてもらった。
「母さん、それ料理用のはさみだから、やめてほしい」
「洗ってるよ?」
義母はきょとんとして、何が問題なのか分かっていない様子だった。
聞けば初めてではなく、私が見ていない時にも何度も繰り返していたという。台所の空気が、すっと凍りついた。
家族が黙り込んでいる。その雰囲気を察した義母は、急に声を荒らげた。
「人がよかれと思ってやってるのに」
言いかけて、言葉が続かない。
子がはさみを指さして「これなにしてるの?」と無邪気に尋ねると、義母はばつが悪そうに視線を落とした。誰も笑わなかった。
私は箱から新しいはさみを出し、古い物をゴミ箱に捨てた。
義母はそれを目で追い、何か言いたげに口を動かしたが、結局言葉にはならなかった。
その夜、夫と二人で長く話し合った。義母を責めたいわけではない。
ただ、子の口に入る物のことだけは、どうしても折れられなかった。翌朝、私は義母にまっすぐ向き直った。
「衛生観念が違うので出ます」
声を荒らげるつもりはなかった。それでも、はっきり伝えなければと思った。
義母は反論しかけ、結局うつむいたまま口を閉じた。
根本の価値観が違うのだと、もう取り繕う言葉もなかったのだろう。それ以上、押し問答にはならなかった。
別居を決めてから、私は迷わず台所に立てるようになった。家族の食卓を守れた。それで気持ちは晴れていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














