「ペットボトルのコーヒーがあるんだ」遊びに来たママ友が何気なく放った一言に感じた違和感
何気ないお茶の時間
その日、家に招いたのは、ふだんから仲良くしている近所のママ友だった。子育ての悩みを気軽に話せる、数少ない相手だ。リビングに案内して、私はキッチンへ向かった。
「飲み物、アイスとホットどっちがいい?」
「うーん、暑いしアイスコーヒーにしようかな」
冷蔵庫を開けて、ペットボトルのコーヒーを手に取る。うちではこれが定番で、グラスに氷をたっぷり入れて注ぐのがいつものやり方だった。
トレーにのせてテーブルに運ぶと、彼女はグラスをじっと見ていた。
「これって、ペットボトルのやつ?」
「うん、そうだよ」
グラスをのぞき込んだ顔
彼女は少し目を丸くして、それから笑顔になった。
「ペットボトルのコーヒーがあるんだ」
そんなに珍しいことだろうか。私が返事に迷っていると、彼女はにこやかに付け加えた。
「でも、美味しいね、これ」
その「でも」が、なぜか妙に耳に残った。美味しいよね、と言われているのに、素直に受け取れない自分がいる。
きっと深い意味はなくて、ただ思ったことを口にしただけ。それは頭では分かっている。彼女にとってペットボトルのコーヒーは、ほんの少し珍しいものだっただけなのだ。きっと、それ以上でもそれ以下でもない。
(本当は、たいしたことないって思ってるのかな)
そう考えてしまう自分のほうが、よっぽど性格が悪いのかもしれない。
そう思うと、ますます何も言えなくなった。
言えないまま残ったもの
「うちはずっとこれなんだ。手軽でね」
かろうじてそう返したけれど、声が少しだけ硬くなった気がした。彼女はもう次の話題に移っていて、子どもの保育園のことを楽しそうに話している。
気にしているのは、たぶん私だけだ。
悪気がない相手ほど、対処に困るものはない。怒れば大人げないと言われ、流せば自分の中にもやもやが残る。はっきり「それ、ちょっと失礼だよ」と言えたらどんなに楽だろう。
でも、そんなことを言えば、せっかくの仲のいい関係に小さなひびが入ってしまう気がした。結局、どちらも選べないまま、私はあいまいに笑ってグラスを傾けた。
「じゃあ、またね」
帰っていく彼女の背中を見送りながら、私は小さく息をついた。テーブルには、氷が溶けて薄まった二つのグラスが並んでいる。
彼女のぶんは、ちゃんと空になっていた。美味しいと言っていたのは、嘘ではなかったのかもしれない。
それでも、あの一言のひっかかりだけは、その日のうちには消えてくれなかった。次に来たときも同じことを言われたら、私はやっぱり笑ってやり過ごすのだろう。そんな自分に、少しだけため息が出た午後だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














