「植木鉢?何のこと」とぼけて車庫を物置化した義祖母。だが、妻の本音で状況が一変
増え続ける他人の荷物
近くに住む大姑は、片付けが苦手な人だった。
使わない物を捨てられず、家からあふれた荷物の行き先が、私たちが家賃を払って借りている車庫だったのだ。
最初は、小ぶりの植木鉢が一つ置かれているだけだった。
「邪魔なら言ってね」と大姑が言うので、私も「大丈夫ですよ」と受け流していた。今思えば、そこが始まりだった。
丸めた障子紙、空の段ボール、土の乾いた植木鉢。
断りもなく運び込まれる荷物は、月を追うごとに数を増していく。
半年も経つ頃には、車を停めるのもひと苦労になっていた。
「一つくらい、いいでしょう」
やんわり困り顔を見せても、大姑はそう言って取り合わない。
夫の祖母にあたる人に、これ以上角を立てたくない。
私はまた、言葉を飲み込んでしまうのだった。
先月の週末には、買い物から戻ると車庫の前に古いカラーボックスまで積まれていた。
車を出すのに、いちいち荷物をどかさなければならない。それでも私は「あとで片付けますね」と、つい笑顔を作ってしまう。そんな自分が、少し情けなかった。
とぼけた一言で目が覚めた
限界を感じたのは、ひときわ大きな植木鉢が車庫の中央に据えられた日だった。ひび割れて、もう使い道もなさそうな代物である。これでは車のドアも満足に開かない。
私は意を決して声をかけた。
「この植木鉢、どうされますか」
すると大姑は、心底不思議そうな顔でこう返した。
「植木鉢?何のこと」
自分で運んだものを、覚えていないふりをする。
その一言で、私の中に残っていた遠慮が、音を立てて消えた。ここで折れたら、来月にはまた別の荷物が届くだろう。
「ここは、私たちが暮らすための場所です」
努めて穏やかに、けれど一歩も引かずに、私は続けた。
「持ち帰ってください」
大姑は「あら」と言ったきり、言葉を失った。
いつものとぼけた笑みも、今日は浮かんでこない。しばらく黙って車庫を見回すと、「……置きすぎたわね」と、決まり悪そうに視線を落とした。
翌週には、積み上がっていた荷物が跡形もなく消えていた。大姑が一人で、少しずつ自宅へ戻したのだ。運び出す背中は、少しばかりばつが悪そうに見えた。
「ごめんなさいね、つい甘えてしまって」
後日、道で会った大姑は、そう言って小さく頭を下げた。あの強気なとぼけ顔は、もうどこにもなかった。
それからの大姑は、車庫の前を通るとき、そっと目を伏せるようになった。私たちの暮らしの場所に、他人の荷物が積み上がることは、もうない。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














