「腹減った、飯はまだ作れないの」16週でつわりの私を急かし続けた夫→私がついに返した本音
玄関から飛んでくる催促
玄関のドアが開く音がすると、体が勝手に強張るようになりました。
「腹減った、飯はまだ作れないの」
靴を脱ぎながら、夫が台所をのぞき込みます。何も乗っていないコンロを見て、あからさまにため息をつくのです。
妊娠16週。
つわりで、夕方はいちばん動けない時間帯でした。
「なんとなくだるいって、それ理由になる?」
説明しようとするたび、うまく言葉が出てきません。頭が重い、おなかが痛い。
そのどれもが、曖昧に響いてしまうのです。
「で、今日は何してたの?」
洗濯も掃除も、休み休みでも済ませていました。それでも夫の目には、何も映っていないようでした。
体の変化で気持ちが荒れるのも、自分では止められません。それを話しても、返ってくるのは同じ言葉でした。
「そういうの、こっちも腹立つんだけど」
夫の担当は、猫のトイレと週に一度のお風呂洗いだけ。それきりでした。
乾いた洗濯物がいつ取り込まれているのか、床の埃が誰の手で消えているのか、考えたこともなかったのでしょう。
そんな夫が、おなかの目立ち始めた夜にソファへ寝転んだまま、当たり前のような顔で言ったのです。
「産後もこの家でいいだろ。俺が仕事から帰って育児すれば回るって」
カレンダーの余白
その日、私は初めて言い返しました。壁からカレンダーを外して、食卓に広げたのです。
「じゃあ書こう。あなたが帰ってから寝るまでの育児、何時から何時?」
夫がペンを受け取ります。けれど、先が紙に触れません。
「……十時から、寝るまで?」
「授乳は三時間おきだよ。夜中の二時も、五時もある。どれを持つ?」
夫の手が止まりました。
「沐浴も洗い物も寝かしつけも毎日。今のあなたは、猫のトイレとお風呂洗いで一週間だよね」
「……そんなに、あるのか」
声がかすれていました。数字の並んだ余白から、夫は目を離せずにいます。青ざめた顔で何か言おうと口を開きかけ、けれど言葉が続かず、最後は小さく首を振ってうつむいてしまったのです。
「16週の私が飯を出すのが遅い、そういう話だった?」
「……違う。悪かった」
私が返したのは、たった一声でした。それだけで、見えていなかったものが夫の前に並んだのです。
その夜から、夫は帰宅するとまず台所に立つようになりました。カレンダーは、食卓の壁にそのまま貼ってあります。
飯はまだ、と急かす声はもう聞こえません。ドアを開けた夫が最初に言うのは、私の顔色を見てからの「座ってて」に変わったのでした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














