「名前は呼ばないで欲しかった」ブーケトスで名前を呼ばれた姉。だが、席に戻った姉の本音とは
隣り合わせた新婦の姉
友人の結婚式で、私は偶然、新婦の姉と席が隣り合わせになりました。
気さくで話しやすい方で、料理の感想や妹さんの子どもの頃の話で、自然と会話が弾んでいきました。
ふとした流れで、姉がまだ独身であることも知りました。
それでも、明るくよく笑うその人と過ごす時間は心地よく、私はすっかり打ち解けていたのです。
穏やかな披露宴だと、そのときは思っていました。
まさか、この方が少しあとに、いたたまれない顔をすることになるとは想像もしていませんでした。
飛んできた声援
宴の終盤、ブーケトスの時間になりました。
独身の女性は前へどうぞ、という案内で、隣の姉もそっと席を立ちます。
前に並んだ女性たちを眺めていると、親族の男性が突然、姉の名前を大きな声で呼びました。
「ほら、次こそあなたよ、しっかりね」と、笑いを誘うように声援を送ったのです。
会場は温かい笑いに包まれ、その方に悪気は少しもないのだと、私にも伝わってきました。
場を明るくしようという、精いっぱいの厚意だったのでしょう。
独身の姉を元気づけて背中を押したい、そんな親心のようなものさえ、そこには感じられました。
けれど、名指しされた姉は、ぎこちない笑みを浮かべたまま、明らかに頬を赤らめていました。
祝いの席で自分だけが皆の視線を集めてしまい、身の置きどころに困っているのが、隣の私にはよく分かったのです。
本人だけが抱えた本音
ブーケトスが終わって席に戻ると、姉は小さく息をつき、私にだけそっと打ち明けてくれました。
「名前は呼ばないで欲しかった」
悪気がないのは分かるから、笑って受け流すしかなかった。そう言って、姉は困ったように眉を下げました。
誰かを責めたいわけではないけれど、あの瞬間はやっぱり恥ずかしかった、と。
私は、うまい言葉を返せませんでした。独身の人だけを前に集めて名指しで励ます、その善意そのものが、本人を晴れの場で晒してしまう。
そのことに、姉自身も気づきながら黙っていたのだと思うと、なんとも言えない気持ちになりました。
幸せを祝う席のはずなのに、その形が誰かをそっと追い詰めてしまうこともある。よかれと思って差し出された言葉が、いちばん近くにいた本人を戸惑わせていたのです。姉の恥ずかしそうな横顔は、今も私の胸の奥に、小さな棘のように残り続けています。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














