「今日、買い物行くんでしょ?」髪型も、習い事も、出かけた先も重なる知人。我慢出来ずに私は距離を置いた
行く先々で、なぜか会うようになった
子どもの園で知り合った人は、最初のころ、いちばん話しやすい相手だった。
困ったときに声をかけてくれるのはいつもその人で、私も頼りにしていた。
少し気になり始めたのは、持ち物が重なるようになってからだ。私がかばんを買うと、数日後にはその人もよく似たものを持っていた。髪を切ったときも、すぐに気づかれた。
「あ、髪切った?いいね、その長さ」
「うん。ちょっと短くしたんだ」
「どこで切ってるの?」
「駅の近くの美容院だよ」
「へえ、そこなんだ。私も今度行ってみようかな」
同じ店に行くくらい珍しいことではない。そのときは、好みが似ているのかもしれないと少しうれしく思っていた。
ところが、そのうち子どもの習い事の曜日まで同じになった。
さらに、休日に家族で出かけた先でも何度か顔を合わせた。行き先はいつも当日に決めていて、その人に話した覚えはなかった。
「あれ、また会ったね。びっくりした」
「ほんとだね。すごい偶然」
最初は私も笑っていた。
けれど、二度、三度と続くと、少しずつ気になってくる。
三度目に出先で会ってからは、週末の予定や買い物の話を、その人の前ではなるべくしないようになった。
「今日、買い物行くんでしょ?」
決定的だったのは、子どもを園へ送った帰りの朝だった。
その日の予定は前の晩に私一人で決めたもので、まだ誰にも話していなかった。
門を出たところで、その人に呼び止められた。
「ねえ、今日、買い物行くんでしょ?」
思わず足が止まった。
「え…なんで分かったの?」
「え?」
「今日、買い物に行くって。誰にも言ってないんだけど」
その人は少し考えるような顔をしてから、笑った。
「ああ、なんとなく。今日はそんな感じかなって思っただけ」
「……そっか」
それ以上、何を聞けばいいのか分からなかった。
ただの偶然かもしれない。私が気にしすぎているだけかもしれない。そう思いながらも、その日は少し落ち着かなかった。
それから、こちらから連絡する回数を減らした。出かけた話をするとしても、帰ってきてからにした。理由を問い詰めたり、「ついてきているの?」と聞いたりはしなかった。
しばらくすると、向こうから話しかけてくることも減った。出かけた先で顔を合わせることもなくなり、園の門の前で見かけても、以前のようにそばへ来ることはなかった。
春になり、私はまた髪を短くした。
その翌朝、園の門を出たところで、その人とすれ違った。
その人の髪も、私とよく似た長さになっていた。
「あ、おはよう」
「おはよう」
相手は私の髪を見て、少し笑った。
「髪、切ったんだ。似合ってるね」
「ありがとう」
それだけ言って、私たちはそのまますれ違った。
今はもう連絡を取っていない。
あの偶然がどこまで本当に偶然だったのか、あの人が私のことをどこまで知っていたのか。結局、それだけは今も分からないままだ。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














