「母さん、それ、ずっと払っとるの?」妹に母を任せた1か月後…電話で聞いた暮らしぶりに、私が決断したこと
母のために用意した部屋は、妹名義だった
母が入院し、退院しても実家には戻れなくなった。長いあいだ手を入れておらず、風呂が使えなくなっていたからだ。
私は実家の近くで母が暮らせる部屋を探した。契約名義は妹にした。
半年ほどたったころ、その妹から電話がかかってきた。
「母さん、もううちで看ることにするから」
突然の話に、私は言葉を失った。
「え…今の部屋はどうするの?」
「引き払うよ。うちに来てもらう」
「母さんは、それでいいって?」
少し間があった。
「大丈夫。私が看るから」
妹の声には、もう決めたという響きがあった。私は退去を手伝い、母を妹の家へ送り出した。
ひと月ほどして、母に電話をした。
寝起きしているのは二階の5畳の部屋。毎月まとまった生活費を渡し、電気代を足す月もあるという。
弁当などの食費も母が出していた。
「母さん、それ、ずっと払っとるの?」
「まあね。置いてもらっとるんじゃから」
「でも、食べるものまで自分で出しとるんでしょう?」
母はしばらく黙っていた。
「ええんよ。あの子も大変なんじゃけん」
そして、声を落とした。
「この話、あの子には言わんでね。世話になっとるんじゃから」
「母さんまで、そんなに気をつかわんでええよ」
母は「うん」とだけ答えた。
妹には知らせず、実家を建て直した
私は妹を問い詰めなかった。言い合いになれば、母が自分を責めるような気がしたからだ。
代わりに、実家を建て直すことにした。
工務店に見てもらうと、直すより建て直したほうがいいと言われた。
蓄えを出し、母の寝室は一階の南向きにした。毎日階段を使わなくても暮らせるようにしたかった。
家が完成した日、私は明細の綴りを鞄に入れて妹の家へ向かった。
玄関に出てきた妹に伝えた。
「家、できたよ。母さんが一階で暮らせるようにしてある」
妹は目を見開いた。
「…何それ。聞いとらんけど」
「言ってなかったから」
「なんで勝手にそんなことするん?」
私は鞄から綴りを出した。
「母さんが遠慮せずに暮らせる場所を作りたかったんよ。費用は私が出した。母さんのお金は使っとらん」
妹は明細に目を落とした。
「…そこまでせんでもよかったじゃろ」
「そうかもしれん。でも、私はそうしたかった」
妹はそれ以上何も言わなかった。
奥から出てきた母に上着を着せ、私は一緒に車へ向かった。
玄関を出たところで、母に言った。
「母さん、新しい家で暮らそうね」
母は驚いたように私を見て、小さくうなずいた。
「着いたよ。今日から新しい家で暮らそうね」
母は家を見上げたまま、しばらく黙っていた。
「…ここで暮らしてええの?」
「うん。もう気をつかわんでええから」
母は何度もうなずいた。
「ありがとうね」
日の当たる一階の部屋に入ると、母は窓の外を眺めた。
「ここなら、朝も明るくてええね」
その声を聞いて、私はようやく肩の力が抜けた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














