「ちゃんと祈祷しなきゃお参りじゃない」孫の体調よりお参りを優先したい義母。だが、夫の一言で黙り込んだ
写真だけという約束
息子が生まれたのは、感染症が広く流行していた頃のことだった。予防の手立ても乏しく、生まれたばかりの体を人混みにさらすのは、どうしても避けたかった。
それでも、お参りの記念は残してあげたい。私は両家にこう提案した。
「室内での祈祷はやめて、神社の外で写真だけ撮りませんか」
夫も義父も、すぐに賛成してくれた。義母も、その場では頷いていた。これで話はまとまったと、私は安心していた。
「写真だけでも、十分いい記念になりますよ」
夫がそう言い添えると、義母は小さく「そうね」と返した。だから私は、もうこの件で揉めることはないと思い込んでいたのだ。
蒸し返された約束
ところが後日、息子に会いに来た義両親を前に、義母がまた切り出した。私はちょうど体調を崩し、二階で休んでいたため、階下のやり取りは夫から聞いた話になる。
「ちゃんと祈祷しなきゃお参りじゃない」
一度は引いたはずの話を、義母はまた持ち出してきた。
「この時期に、わざわざ建物の中に長くいるのは危ないよ」
夫はそう説明したが、義母は聞き入れない。きちんとやるのが当たり前だと、譲ろうとしなかった。記念やしきたりを盾に、声はどんどん大きくなっていったという。
せっかく一度は納得してくれたはずなのに、孫を前にして気持ちが揺り戻したらしい。
夫の手には、生まれたばかりの息子がいた。その小さな体を守りたい一心で、夫はもう一度、はっきりと言った。
「祈祷しないなんてお参りじゃない、なんて言われても、今は子どもが一番だから」
黙り込んだ義母
そこで横から、義父が口を開いた。普段は穏やかな人が、めずらしく厳しい声を出したそうだ。
「口出しするな。そんなこと言ってると、もう孫に会えなくなるぞ」
その一言で、義母はぴたりと黙った。
「でも、しきたりっていうものが……」
か細く反論しかけたものの、続きは出てこない。義父はなおも言葉を重ねた。
「赤ん坊の体より大事なしきたりなんて、あるもんか」
夫も大きく頷いていたという。二人にそろって正面から諭され、義母はばつの悪そうな顔でうつむいた。言いたいことはあったのだろうが、もう言葉にはならなかったらしい。
それきり、祈祷の話は二度と出なかった。
あとから一部始終を聞かされた私は、思わず夫の手をぎゅっと握った。義母からの文句は、その日を境にぴたりと止んだ。
今では会うたびに息子を抱っこしたがり、よけいな口出しはしてこない。あの日の義父の一喝が、すべてを変えてくれたのだと思う。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














