「あら、何か?」ブラックを注文したのにカフェオレを注いだ女性客。だが、店員に声をかけられた途端、表情が変わった
ブラックを注文した女性が押したボタン
もうずいぶん前、お昼に立ち寄ったコンビニでの出来事です。
その店では、レジでコーヒー代を払い、受け取った紙コップを自分でマシンにセットする仕組みでした。
私の前に並んでいたのは、40代くらいの女性です。
女性はカウンターに財布を置くと、店員に注文しました。
「コーヒー、ブラックで。ホットね」
いちばん安いホットコーヒーを注文した女性は、会計を済ませるとマシンの前へ向かいました。
ところが、女性が押したボタンを見て、私は驚きました。
選んだのはブラックではなく、カフェオレだったのです。
あれ、さっきブラックって言っていたよね?
押し間違えたのかと思いましたが、女性は特に慌てる様子もありません。
さらに、カフェオレが注がれているあいだ、マシンの横に置かれたミルクと砂糖のスティックを何本も手に取り始めました。
そして、つかんだスティックを次々とかばんに入れていったのです。
その堂々とした様子に、私は思わず見入ってしまいました。
ちょうど私の番になり、レジへ進んだときです。
店員が女性のほうを見てから、私に声をかけました。
「すみません、少々お待ちいただけますか」
店員に呼び止められた女性
店員はレジの横から出ると、マシンの前にいる女性に近づきました。
「お客様、すみません。少しよろしいですか」
女性はかばんに手をかけたまま振り向きました。
「あら、何か?」
店員はマシンの画面を指さしました。
そこには、カフェオレの表示が残っていました。
「先ほどホットコーヒーでお会計したのですが、こちらはカフェオレですね」
女性は一瞬、黙りこみました。
「お値段が違いますので、差額をお願いできますか」
店員は落ち着いた口調で伝えました。
さらに、女性が手に持っているスティックにも目を向けます。
「あと、ミルクとお砂糖は、お使いになる分だけでお願いします」
周囲にいた客も、何事かとこちらを見ていました。後ろのほうから、小さな笑い声も聞こえました。
女性はしばらく黙っていましたが、やがて小さな声で言いました。
「……いれ間違えただけよ」
「そうでしたか。では、差額だけお願いいたします」
店員はそれ以上、女性を責めることはありませんでした。
女性はかばんからスティックの束を取り出し、棚に戻しました。耳まで赤くなっています。
その後、レジで差額を支払いましたが、そのあいだもほとんど顔を上げませんでした。
会計が終わると、女性は足早に店を出ていきました。
店員はカウンターに戻ってくると、私に頭を下げました。
「お待たせしてすみません。ご注文をどうぞ」
「ホットコーヒーを一つ、お願いします」
私はそう答えながら、先ほどのやり取りを思い返していました。
ふとマシンの横を見ると、女性が戻したスティックが棚の箱の中で乱れたままになっています。
あれほど堂々としていた女性が、店員に声をかけられると、急におとなしくなってしまったのが印象的でした。
大きな声で注意することもなく、必要なことだけをきちんと伝えた店員。
その落ち着いた対応に、私は心の中で拍手を送りました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














