「主婦もランク感を大事にしないと」有名な焙煎所を語るママ友に、喫茶店のマスターが伝えた事実
「それにするの?」と言われて
子どもが同級生だったころ、保護者会でよく顔を合わせるママ友がいました。
いつもきれいな服を着ていて、話題も豊富。
何人かで話していると、自然とその人が中心になることが多かったです。
ある日の保護者会の帰り、数人で通り沿いの小さな喫茶店に入りました。
木のカウンターにはコーヒー豆の入った瓶が並び、その横には茶色い紙袋がいくつか置かれていました。
メニューを見て、私は350円のブレンドを注文しました。
すると隣にいたママ友が、少し意外そうな顔をしました。
「え、それにするの?」
「うん。ブレンド、おいしそうだなと思って」
そう答えると、彼女はメニューの値段に目を落としました。
「350円なんだ。私、ブラックで飲むなら豆とか焙煎所を結構見るんだよね」
そして、有名な焙煎所の名前を挙げました。
「そこの豆、香りが全然違うの。家でも買ってるんだけど、一度気に入るとほかを選ばなくなっちゃって」
「へえ、そんなに違うんだ」
コーヒーに詳しくない私は、素直に感心しました。
すると彼女は少し笑って、さらに続けました。
「まあ好みなんだけどね。でも、主婦もランク感を大事にしないと。コーヒー一杯でも、ちょっとこだわりたいじゃない?」
「そういうものかな」
私は苦笑いしながらメニューを閉じました。
彼女は「今日はミルク入りの気分だから」とカフェオレを注文し、ほかのママ友たちもそれぞれ飲み物を頼みました。
マスターが教えてくれたこと
私たちが座っていたのは、カウンターからすぐ近くのテーブルでした。
しばらくして、マスターが飲み物を運んできました。
私の前にブレンドを置いたあと、ママ友のほうを見て声をかけました。
「先ほど、あちらの焙煎所のお話をされていましたよね」
彼女はぱっと顔を上げました。
「あ、はい。よく買うんです。おいしいですよね」
「そうですよね。うちも、そちらから豆を仕入れているんですよ」
「え?」
彼女の表情が止まりました。
マスターがカウンターに置かれていた茶色い紙袋を示します。
見ると、先ほど彼女が名前を挙げた焙煎所の印が入っていました。
「今日のブレンドにも使っています。よかったら味わってみてください」
そう言って、マスターは穏やかにカウンターへ戻っていきました。
ママ友は少し黙ったあと、私のカップを見ました。
「…同じところの豆なんだ」
「みたいだね」
私もそれ以上は何も言わず、ブレンドに口をつけました。
値段だけでは分からなかった
詳しい味の違いまでは分かりませんでしたが、香りがよく、素直においしいコーヒーでした。
向かいに座っていたママ友もひと口飲んで、「私も次、これにしようかな」と笑いました。
「おいしいよ」
そう返すと、それまで少し気まずかった空気も自然とほどけていきました。
先ほどのママ友もカフェオレを飲みながら、「ここ、ちゃんと豆にこだわってるお店だったんだね」と小さく言いました。
帰り道、隣を歩いていたママ友がぽつりと言いました。
「値段だけ見ても分からないものだね」
「ほんとだね。私なんて、たまたま選んだだけだけど」
二人で笑いました。
それ以来、近くを通ったときには、ときどきあの店のブレンドを飲みに寄るようになりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














