「電話くらいで文句言われる筋合いねえよ!」夜、ベランダで大声で電話する隣人。だが、普段は優しい強面住人の本気に絶句
注意されても止まらないベランダ電話
引っ越してきたばかりの隣の男は、夜になるとベランダで電話をするのが習慣のようだった。問題は、その声量だ。深夜だろうとお構いなしに、誰かと言い争うような大声を張り上げる。
「だからそれはお前の勘違いだって言ってるだろ!」
あまりに毎晩続くので、私は管理会社に相談した。担当者は隣へ注意をしてくれたという。だが、効果はまるでなかった。それどころか、男は注意されたことに腹を立てているようだった。
「電話くらいで文句言われる筋合いねえよ!俺の勝手だろ!」
ベランダ越しに、わざと聞かせるように吐き捨てる声がした。完全に開き直っている。これ以上刺激して、逆恨みされるのも怖い。
「直接言うのだけは、やめときなよ」
事情を話した友人にも、そう釘を刺された。相手の顔も知らない以上、何をされるか分からない。私は何も言えないまま、毎晩ただ耐えるしかなかった。窓のサッシに隙間テープを貼ってみても、あの太い声を防ぐことはできなかった。
諦めかけた夜に起きた逆転
その夜も、男の電話は始まった。布団の中で耳を塞いでも、太い声が頭の芯まで響いてくる。
「だからお前が謝れって話だろうが!」
もう限界だった。明日こそ本気で引っ越しを考えよう。そう思った、その時だった。すぐ上の階のベランダから、腹の底に響くような怒鳴り声が落ちてきた。
「夜中にうるせえんだよ!」
「警察呼ぶぞ!」
その声を聞いた瞬間、私は息を呑んだ。声の主に、心当たりがあったからだ。上の階に住んでいるのは、いかつい顔つきで、廊下ですれ違うとつい目を伏せてしまうような体格の男性だった。
「……だ、誰だよ」
隣の男のうわずった声が漏れ聞こえた。さっきまでの威勢はどこにもない。
強面の本気に凍りついた隣人
でも、私はその人の本当の顔を知っていた。ゴミ捨て場で会えば必ず会釈してくれるし、重い荷物を運んでいたら黙って扉を押さえてくれる。見た目とは裏腹に、誰よりも気遣いのできる優しい人だった。その人が、今夜ばかりは一切の遠慮をかなぐり捨てて、本気で怒っていた。
「……すみませんでした」
あれほど威勢のよかった隣の男から、消え入るような声が漏れた。慌てて電話を切ったのだろう、ベランダの方からは物音ひとつしなくなった。
「うそ、静かになった……」
私は思わず声を漏らした。あの日以来、隣のベランダから大声が聞こえることは二度となかった。取り戻した静かな夜の中で、私はあの強面の住人にこっそり感謝した。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














